今年2月に92歳で他界した巨匠、市川崑監督の70数本におよぶその作品歴の中で、生涯ただ一本、未公開となっていた『その木戸を通って』。とても美しい映画だった。『わが国初の本格的長編ハイビジョンドラマとして1993年8月に完成しながら、その後BSで一度だけ流れた以外、人の目にほとんど触れることなく眠っていた』というのだからもったいないったらない！市川崑監督の、さすが“映像の魔術師”という仕事っぷりを大きなスクリーンで観ることができて感動。カメラアングルといい、光と影のコントラストといい、音響といい、ほんとうに繊細で、まさに“宝石のよう”な作品！日本映画っていいなーーって改めて思った。もっと多くの人に観てもらえるように宣伝すればいいのにーー。92歳は長寿だけど・・亡くなられたこと惜しいよね(T^T)
監督・脚本：市川崑 原作：山本周五郎。『娘の婚礼の日、城勤めの武士・平松正四郎（中井貴一）は、自分と娘を残し、こつ然と姿を消した最愛の女性ふさ（浅野ゆう子）のことを思い出していた。17年前、正四郎の家に突然迷い込んできた記憶喪失のふさは、城代家老の娘との縁組が決まっていた正四郎と心を通わせ合うようになり、やがて結婚して子どもをもうけたのだが……。』
これはファンタジーだわ。映像はもちろんだけど脚本も見事。城勤めの武士たちの会話も楽しかった。中老の田原（フランキー堺）と正四郎とのやりとりも温かみがあっていい。そしてトレンディー女優として全盛期だったころ？33歳の浅野ゆう子が美しいです。そしてエンドロールの市川崑監督直筆の絵コンテがかわいいよ。
