”満州里のサーカス団にいる象は、ずっとそこに座っている。誰かがフォークで刺そうとも、そこに座っているだろう。多くの人が走って行っても、檻を持って見ているだろう。誰かが食べ物を放っていっても、構うことはないだろう。”
シアター・イメージフォーラムにて映画『象は静かに座っている』
29歳で撮ったこの映画がデビュー作で遺作となったなんて…フー・ボー監督を失ったことが映画界の大きな損失だと思う。泣きたい。
映画が好きならこの映画(234分長く感じないです!)を観ないといけないと思う。
ラストシーンの前まで胸がぎゅうと締め付けられていた。ずっと。鳩尾のあたりが。
私の2019年映画ベスト1です。そんなにたくさん観ているわけではいないけれど。
主人公のひとり少年ブー(韋布)を演じたポン・ユーチャン(金馬奨の主演男優賞にもノミネートされた!)彼がグレーのパーカーのフードをかぶってリュックを背負っている後ろ姿が度々映るんだけど、そのたびに田島亮くんを思い出してしまったわけですが😊
独特なカメラワーク。音楽も静かに沁みる。全てが美しかったーー。
監督・脚本・編集:フー・ボー(胡波)
出演:チャン・ユー章宇、ポン・ユーチャン彭昱暢、ワン・ユーウェン、リー・ツォンシー
撮影:ファン・チャオ 録音:バイ・ルイチョウ 音楽:ホァ・ルン 美術:シェ・リージャ サウンドデザイン:ロウ・クン
「時代の流れとともに炭鉱業が廃れた中国の小さな田舎町。少年ブーは友達をかばい、不良の同級生をあやまって階段から突き落としてしまう。不良の兄は町で幅を利かせているチェンだった。チェン達に追われ町を出ようとするブーは、友達のリン、近所の老人ジンをも巻き込んでいく。親友を自殺に追い込んでしまい自責の念のかられているチェン、家に居場所がなく教師と関係を持つことで拠り所をみつけるリン、娘夫婦に邪険にされながらも老人ホーム行きを拒むジン。それぞれに事情を抱えながらも、遠く2300km先の果て満州里にいる、一日中ただ座り続けているという奇妙な象の存在にわずかな希望を抱き4人は歩き出す――。」
第68回ベルリン国際映画祭 フォーラム部門 第1回作品賞スペシャル・メンション& 国際映画批評家連盟賞
「2018年11月16日、台湾・国父紀念堂で開催された第55回金馬奨授賞式、注目作品のなかでも異彩を放っていたのが、上映時間が約4時間にも及ぶ長編作「大象席地而坐(以下、「象は静かに座っている」)」だった。「象は静かに座っている」は数々の素晴らしい映画を抑え、作品賞に輝いた。胡波にその知らせは届いただろうか。
若き映画監督・胡波は、「象は静かに座っている」を完成させた後、2017年10月12日に自らこの世を去っている。29歳だった。」
「私の“生徒”であり、私の友、私の家族である君がいないことを残念に思う。何百人もの中国人監督が私と働きたいと出願してきたが、彼に会い、すぐに心が決まった。一切の迷いもなく! 彼は気品に溢れ、ともに素晴らしい仕事をすることができた。彼の目には並々ならぬ、強い個性が表れていた。クソ! 彼をちゃんと守れなかったことに、私は責任を感じている。残念でならない。彼は、両方の端から彼というろうそくを燃やしていたのだ。今ここにあるすべてを手に入れようとした。私たちは彼を失ったが、彼の映画は永遠に私たちと共にある。フー・ボーの映画を迎えてください。そして私と同じように彼を愛してください。」 フー・ボーが師と仰いだタル・ベーラ監督のコメント。