試合がナイトゲームだったので行ったとしか書けなかった映画『ベルファスト』、素晴らしい映画だと私は思います。
ケネス・ブラナーが監督・製作・脚本を兼任し、自身の幼少期を投影した自伝的作品。舞台となった1969年は「北アイルランド紛争( the Troubles)」へ突入していった時代で、北アイルランド ベルファストではプロテスタント教徒(=イギリス派)とカトリック教徒(=アイルランド共和国派)が反目し、1998年の和平合意に至るまでに3600人近い死者を出したそうです。
9歳の少年バディの目線を通し、時代に翻弄され様変わりしていく故郷の厳しい現実と、家族とともにそこで過ごした愛と笑顔と興奮に満ちた日々を力強いモノクロ映像で描く。
STORY「ベルファストで生まれ育ったバディ(ジュード・ヒル)は家族と友達に囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごす9歳の少年。たくさんの笑顔と愛に包まれる日常は彼にとって完璧な世界だった。しかし、1969年8月15日、バディの穏やかな世界は突然の暴動により悪夢へと変わってしまう。プロテスタントの暴徒が、街のカトリック住民への攻撃を始めたのだ。住民すべてが顔なじみで、まるで一つの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断されていく。暴力と隣り合わせの日々のなか、バディと家族たちは故郷を離れるか否かの決断に迫られる――。」
冒頭はカラーなんですよ。多分現在のベルファストで、1969年に戻りモノクロへ。でも色を感じます、見えます。バディの家はプロテスタントですがバディ家族が住んでいた地域はカトリック系の住民が多く、でも助け合って暮らしていた。そこへベルファストからカトリック教徒を追い出そうとするプロテスタントの過激集団の暴動に巻き込まれいく街(ロシアに侵略され始めた頃のウクライナのよう・・)。
環境にやさしいからとチョコレートでなく洗剤を万引きしちゃったバディ少年。
映画や演劇が娯楽だったことがわかります。おばあちゃんと舞台も観に行くし、お色気シーンがある「恐竜100万年」(「ショーシャンクの空へ」で1947年に牢屋に入れられたアンディが1966年に独房独房に貼ったポスターが『恐竜100万年』のラクエル・ウェルチです。)を家のテレビで観る微笑ましいシーンから「リバティ・バランスを撃った男」「真昼の決闘」「スタートレック」ときて、ラストが祖父が亡くなり祖母と5人で観に行った「チキチキバンバン」いうのがとても可愛くて好き。あ、映画や舞台はカラーという演出。
バディがクリスマスプレゼントでもらったのは「サンダーバード」セット!←ケネス・ブラナーもサンダーバードごっこしたのですね。そういう普通の幸せな家族のシーンです。
映画音楽もその時代のものが使われていました。
ある日突然、その平穏な日常が奪われてしまう。子どもを襲う恐怖と不安、家族、子どもを守ろうとする大人。
なかでも少年と祖父・祖母との会話がいつも微笑ましい。パパはロンドンに出稼ぎ、ママはパパの税金トラブル(お金ないのに競馬が趣味😱)でキリキリいるのでバディは恋の悩みも祖父母に相談します。その答えがとてもユニークかつ素敵でした。
ウクライナや、他の紛争地域に住む人たちが重なります。ウクライナの人たちは映画を楽しむことも奪われて、それどころか父親を奪われて(生きて、会えますように)いる。
チキ・チキ・バン・バンのように家族で別の世界に飛んでいけたらいいのに。
日本のポスターのキャッチコピー「明日に向かって笑え!」なんですね。
演劇が好きなのでベルファストと言えば、イマシバシノアヤウサの『モジョミキボー』です。物語は北アイルランド紛争まっただ中、プロテスタントの家の子モジョとカトリックの家の子ミキボーが主人公の舞台です。バディと同じようにとても無邪気で腕白、映画が大好きで『明日に向かって撃て!(1969)』のブッチとサンダンスごっこ遊びに耽ります。服装で違いがわかりますが子どもたちには関係ない!が、次第に紛争に巻き込まれていきます。
『モジョミキボー』再々演プレビュー初日★★★★★ - ほらほらコーヒーが冷めちゃってるよ 2 https://magnoliarida.hatenablog.com/entry/20191214/1576330286
『ROMA』っぽいのはモノクロに黄色いタイトルというのも同じだからですね。
シェイクスピア劇から『TENET テネット』のセイター役まで、ケネス・ブラナーの多彩な魅力 | GQ JAPAN
そう、シェイクスピア俳優としても有名です。
ケネス・ブラナーの『ハムレット』のDVD、盛りだくさんです😊