亀ちゃんの『BIRTHDAY』以来の新宿シアタートップスにて安西慎太郎ちゃん出演TAAC『人生が、はじまらない』観劇。
作・演出：タカイアキフミ
出演：安西慎太郎 清水優 富川一人 難波なう 南川泰規 齋藤明里 猪俣三四郎 七味まゆ味
映画にもなった、母親が長男に父親が全て違う下の子どもたちの面倒を任せ家を出て行ってしまい、残された子どもたちで何か月もの間暮らした結果、幼い子供の命が奪われた事件がモチーフ。この事件がきっかけで「ネグレスト」という言葉が出てきたんですね。
↑左のコピーしか読んでいなかったので引きこもりの話かなと思っていた私。舞台は1988年に起こった「巣鴨子ども置き去り事件」を背景にネグレストを受けた子どもたちの『その後』を書いた作品でした。
とても暗くてとても重い。慎太郎ちゃん演じる次男の夏生が舞台真ん中に空いた四角い穴にジョウロでお水を撒いている理由が途中でわかる。そのとてつもなく寂しい顔に胸がギュッとなり苦しい。
雨の音、水道（あるシーンで血が流れた）、公衆電話、奥にあるソファ、真っ暗な四角い穴、の演出。キャストはもちろん照明、音楽、良かったです。
大人になった夏生が歌う童謡『雨ふり』は母親も歌っていた歌で、お母さんが蛇の目でお迎えにきてくれる歌詞なのがなんとも切ない。優しいお母さんとの良い思い出の歌なんだろうな。ラストで傘をさしかけてくれたのは…。
出生届も出さず兄以外は外に出ることを許さなかった母親なのに、子どもたちにとって母親は絶対な存在でいつか帰ってくることを信じている。子どもって往々にして母親のせいにしないよね。遊んだりお絵描きしたりケラケラ笑っている彼らと、その後の彼らの違いにその年月を思う。12歳で弟・妹のめんどうを見ていた兄はとても強くて優しい人だったのでしょう。その兄をずっと見てきた弟も優しい。妹は閉じてしまっていた。兄が悪い友人と出会わなかったら…と思うけれどそれで違ったかはわからない。
大人になって長男の進は優しい女性と出会い結婚して子供を授かり、弟と妹も同居して静かに暮らしていた。なのに突然フリーライターに過去を掘り返され…。
モチーフとなった事件でも兄弟たちの前で妹が亡くなっている（というか殺されている）。それがとても大きいなぁ。その場面のあのときの音を彼らが忘れられるわけがないと思うくらい響く。
進は妻と出会い、人生をはじめられたのかな。気持ちを表に出せない妹のゆきには優しい日下部さんがいて、生きる意味を見つけられないような暗い目をしている夏生にもそういう誰かとの出会いがあれば…
生まれてはじまっているはずの人生がどこかで止まっている人たちって実際多いかもしれないね。
まとまりない感想だけど、良い舞台でした。
やっぱり安西慎太郎ちゃんの演技は心に響きます。（2.5次元系は観てこなかったけれど）
あ、七味まゆ味さんのこと他の舞台で観てきたのにお名前の読み方「ななみ」さんじゃなくて「しちみ」さんだと先週知りました。今回意外な役だなぁと思ったら、いや、二役でした。しかも凄い。
美術：稲田美智子 音楽：髙位妃楊子 音響：岩野直人・谷井貞仁 照明：加藤直子 衣装：植田昇明 宣伝ヘアメイク：鶴永チヒロ 演出助手：一楽・佐藤愛理 舞台監督：杣谷昌洋 宣伝美術：山口良太 宣伝写真：堀川高志 舞台写真：堀川高志
安西慎太郎主演のTAAC新作「人生が、はじまらない」開幕、配信＆DVD発売も決定（舞台写真 / コメントあり） （撮影：堀川高志さん）
