演劇界の総合格闘家・成河が語る悔しさ “修業の場”扱いされる舞台【前編】 (筆者:菊地陽子さん)
「好きな劇団の門をたたくことはできるし、ミュージカルのオーディションに応募もできるけれど、俳優になるための入り口は細分化されていますよね。それに、日本では芸能と演劇は切り離せないと思っている人が多いみたいで、『舞台は修業の場』『舞台に出て、有名な演出家に鍛えられて箔をつける』と考えている若手も多い。でも僕は、そういう話を聞くと、本当に悔しいなって思うんです」
野田秀樹、つかこうへいから成河が得たもの「それから復讐劇が始まった(笑)」【後編】
「学校に通っていると、毎年体力測定みたいなのがあって、握力とか反復横跳びとか、そのつどそのつどきちっと測っていくじゃないですか。僕は毎回、超みそっかすでした(笑)。スポーツ科学的には、僕は運動音痴の部類だと思います。でも、そのことと、舞台上で躍動的かどうかは別だということを、僕は野田秀樹さんに教わるんです。演劇においては、足が速いかどうかは問題じゃなく、速く見えるかどうかが大切だということを。たとえば、ウサイン・ボルトがステージの上を本気で走っているところを、彼を知らない人が見て、『速い』と思うかどうか。100人が100人『速い!』って感じるかどうかは怪しいんです。人間が速さや高さを認識するのは、差異がなければ無理なので。それよりもゆっくり歩いてる人が横をしゅん、って追い抜いたとき、それがマッハの速度のように見える」
私が好きな人たちは演劇に対する思いが似ています。