毎日新聞 夕刊に『子午線の祀り』劇評(茺田元子さん)「身体性で明快に再構築」https://mainichi.jp/articles/20170712/dde/012/200/009000c
「月の引力による潮目の変化が、源平の勝敗を決したことから構想し、天の視点から人間の葛藤を描く木下順二の傑作戯曲。野村萬斎の新演出は、古語から現代語までの豊かな劇言語に身体性を乗じ、躍動する絵巻さながら。明快に再構築する。武満徹音楽。」
「「群読」という朗唱スタイルが作品の特徴であるが、可動式の階段や高さのあるスライド舞台(松井るみ美術)を駆使し、ビジュアル化。壇の浦の合戦は階段を個々の船に見立て、フォーメーションに迫力がある。1979年の初演からと同様、ジャンルを超えたキャストで、様式美と会話劇のリアルが重層的な世界を織り成す。成河の明晰なセリフは時に狂気を宿し、策をめぐらす義経をさえざえと造形。村田が重能の苦悩をうまく出し、国太郎の宗盛に右往左往するおかしさと悲しみがある。現代の我々は勝敗の行方を知っているが、それでもなお、運命と対峙するさまに揺さぶられる4時間弱が、実に濃密である。」