「冒頭、吉田自身が演じる説明役が、名高いアジンコートの合戦の場面は迫力不足に映るかもしれないと、事前に観客に詫びるのだが、まったくの謙遜である。イギリス軍の長弓隊まで登場する殺陣回りのスケールの大きさは、理屈抜きに楽しめる。」
「シェークスピアの台詞を扱う吉田の手つきだ。劇中でいちばん有名なヘンリー王の合戦前の演説がほとんどカットされている。幕開きに前作「ヘンリー四世」のダイジェスト映像を流すよりも、本作の見どころを余さず伝えることの方が観客への真の心遣いではなかろうか。」
谷岡先生の劇評は、同じ「演説が見たかった」と言うのでも、初日開けてから執拗に悪口とも取れる呟きをしていた方*と全然違って嫌な感じはしない。
*さいたまで「『ヘンリー五世』徹底勉強会」までした、言わば関係者なのだから、多くの人の目に触れる場所に書くのは確信犯だと思ったわ。
いろんな感想があるのは当たり前。私はこの『ヘンリー五世』とても楽しく観ましたが、それでも思うことはいくつもあります。
フォルスタッフの登場から始まるのはいいと思う。蜷川さんからバトンが渡されたような演出だから。でも、あの映像はチープすぎだと思う。なくていいと思った。
「コーラスの台詞が長い、目立ちすぎ」という意見も聞きました(多分主役ファン)鋼太郎さんが台詞をさいたまに変えたから、実はかなりカットされた原作を読んでいないのだろうと思ったのですが、たいていの人は読まずに劇場に来てますから、「想像してください」も原作にないと思う人が多いかも。これも仕方ないのかなと。
あと、早い時間帯(3幕)のキャサリンとアリスの英語の勉強シーンととても唐突で、でも戯曲でも唐突ですよね。原作にないけれど、どうして英語を習いたいのかの説明があってもいいのになと思ったりも。 ルール違反の「捕虜を殺せ」と命じたことに理由があるように。
ネギはやり過ぎかと思っていたのだけど、↓ これを読んで、そうかもしれないと思い直したり・・。
教えていただいた大橋洋一先生の『ヘンリー五世』の劇評、とても腑に落ちます(続きがあるようですが)
「いずれにせよ、今回の力強い『ヘンリー五世』の舞台、松坂桃李をはじめとする演者の力のこもった熱演、そして吉田鋼太郎の演出とコーラス役に支えられて、これまで見失ってきた『ヘンリー五世』のいろいろな面に気づかせてもらった。このことについては、どんなに感謝しても感謝しきれない。大げさなことを言えば、今回、はじめて『ヘンリー五世』を観たという思いにとらわれたのである。」