今日は最後の夏休み。
東京芸術劇場Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』観劇。M列上手寄り(すごく観やすいお席でした〜)
『三人吉三廓初買』(さんにんきちさ くるわの はつがい)は、安政七年 (1860) 正月、江戸市村座で初演された歌舞伎の演目。( 正月上演が肝だと思う)
大好きなキノカブがプレイハウス進出です!演出の杉原邦生さんも初プレイハウスですって。
凄く面白くてお隣の知らない方と幕間に意気投合してワイワイ話したくらい!黙阿弥×キノカブ最高です!
13時開演〜アフタートーク終わり劇場を出たのが19時。本編の疾走感が半端なく楽しく長さを感じないどころか劇場を離れたくないくらいで木ノ下さんと杉原さんトークも簡潔かつ楽しくてもっと(あと3時間くらい⏰)聞いていたかった。
お客様の半分くらいはキノカブ初だったようなので、歌舞伎と現代が混ざった衣裳やラップのある演出に戸惑った人もいたかしら… でも客席すごくいい空気でした!通路を使う場面が数回あり楽しませてもらいました。あ、バルコニーも! お嬢吉三・和尚吉三・お坊吉三(撮影:細野晋司さん)
一幕十四場、二幕六場、三幕七場全て上演(安政7年の初演は10時間くらいだったらしい)。歌舞伎興行では上演されない廓話や150年上演されなかった「地獄の場」を入れ5時間にギュッと凝縮。セリフは古語(歌舞伎の言葉)と杉原さんが翻訳した現代口語が混じっているので物語がスッと入ってくる。「因果の綾」とか「見えない糸で引き寄せられた三人吉三の悲劇の最後」とかややこしい人間関係がわかりやすかったです。
「和尚・お坊・お嬢」の三人、「伝吉・おとせ・十三郎」の三人、「一重・文里・おしづ」廓の三人、この三人×三組のコミュニティで『三人吉三』お坊吉三の妹で花魁の一重・おしづという妻がいる文里
セリフを若いキャストが現代口語、ベテラン勢が古語というグループ分けをしているのですが、『三人吉三廓初買』が書かれた時代が江戸が明治に変わる「明治維新前夜」の、国が生まれ変わる時代だったことも理由にあるみたいです。その時代も若者たちは変化にどんどん順応していったのでしょうね。現代語で話す若い人たちも目上の人に対しては古語だったりとちゃんと変えていました。
序盤で庚申丸という宝刀が百両にすり替わる。景気が悪い時代、貧困から「百両のお金」に欲が炙り出される人間たち。自分ではない誰かのために盗む、人を殺してまで…。双子も育てられないからと一人を捨てる…(T . T)
2020年に木ノ下さんが書いていました。「文里は「お坊のために庚申丸を買い戻してやりたい」、十三郎は「文里に返したい」、伝吉とおとせは「十三郎に渡したい」、和尚吉三は「伝吉にあげたい」……みんなそれぞれ思惑があります。」
上に書いた二幕始まりの「地獄の場」。閻魔大王の横に紫式部がいて鬼たちが踊りを見せているというキッチュな場面ですが原文まま(笑)。でも木ノ下さん曰く木阿弥さんが真ん中あたりにこの場を持ってきたんだから意味があるはずだと。唐突なようですが、最後まで観ていくとちゃんと繋がっている。皆が死後のことを考えていて、地獄というキーワード「●●の刑」というセリフが出てきます(当時は誰もが死ぬといったん地獄に行き、天国にいけるかどうか閻魔大王が決めると言われていたそうです)
閻魔大王はお坊吉三の須賀健太さん、緒川さんの紫式部と田中俊介さんの朝比奈(撮影:細野晋司さん)
その「地獄の場」を境にどんどん「死」のイメージが加速していきます。
昨年再演された演出・美術:杉原さんの 『勧進帳』は源義経ら有名人が出てくるけれど、この『三人吉三』はその時代に生きて死んだ市井の人々の物語。もちろん私たちの時代にはありえないことばかり出てくるけれど、1855年に安政大地震があり、コレラの疫病で江戸で多くの人々が亡くなった時代。なんか今とリンクする🔗
木ノ下さんのポストより小塚原化地蔵の場より田中さんの和尚吉三、武居さんの太郎右衛門と川平さんの地蔵!(撮影:細野晋司さん)
実は双子…
三人吉三… この物語のメインの三人の吉三たちを演じた田中俊介さん、須賀健太さん、坂口涼太郎さんが ほんとうに素晴しく心情がぐいぐい伝わってきました。個人的にはキノカブには欠かせない武谷公雄さんと藤野涼子さんが最強でした。
【感動の美しくも儚いラストシーン追記】「上演は29日(日)まで。今や幻となった黙阿弥オリジナル版の全貌を見られるのはキノカブ版のみ。」
(撮影:細野晋司さん)
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— 東京芸術劇場 (@geigeki_info) 2024年9月21日
絶賛上演中!
╰━v━━━╯#東京芸術祭 2024 芸劇オータムセレクション#東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『#三人吉三廓初買 』
上演は29日(日)まで。
今や幻となった黙阿弥オリジナル版の全貌を見られるのはキノカブ版のみ。#木ノ下歌舞伎 × #杉原邦生 のタッグの集大成。… pic.twitter.com/MsdeLQ7p6V
是非是非観てほしい。
【あらすじ】江戸時代。刀鑑定家・安森源次兵衛の家は、何者かにお上の宝刀・庚申丸を盗まれて断絶となっていた。ある時、立身出世を目論む釜屋武兵衛は、巡り巡って木屋(刀剣商)文里のもとにあった庚申丸を金百両で手に入れる。しかし文里の使用人・十三郎は、その取引の帰り道、夜鷹(街娼)・おとせと出会い、受け取った百両を紛失。思いがけず百両を手にしたおとせだったが、十三郎を探す道すがら、女装の盗賊・お嬢吉三に百両を奪われてしまう。
様子を見ていた安森家浪人・お坊吉三は、お嬢吉三と百両を巡って争うが、そこに元坊主・和尚吉三が現れる。彼がその場で争いを収めたことで、三人は義兄弟の契りを結ぶ。
また、失意の十三郎は、川に身投げしようとしたところを、和尚吉三の父・伝吉に拾われていた。訪れた伝吉の家で、彼はおとせと再会し…。一方、吉原の座敷では、文里がお坊吉三の妹で花魁・一重に想いを寄せていた。人柄で評判の文里だったが、彼には妻子があった。文里の求愛を一重が拒みつづけていたある日、文里は、ある決意を座敷で語りはじめる。
作:河竹黙阿弥
監修・補綴:木ノ下裕一
演出:杉原邦生[KUNIO]
出演:田中俊介 須賀健太 坂口涼太郎 / 藤野涼子 小日向星一 深沢萌華 武谷公雄 高山のえみ 山口航太 武居卓 田中佑弥 緑川史絵 川平慈英 / 緒川たまき 眞島秀和
👘「 刀剣ワールド 」さんのあらすじがわかりやすいのでご紹介。https://www.touken-world.jp/tips/7289/
名刀庚申丸と100両が物語を動かす「時代は幕末。タイトルが示す通り、同じ「吉三」の名を持つ3人の盗賊が、あることをきっかけに出会い、義兄弟の契りを結びます。しかしこの出会いこそ、過去の因果が引き寄せた新たな悲劇の始まり。そして、それぞれが目的を果たして差し違え死んでいくという最後。そこには名刀「庚申丸」(こうしんまる)が深くかかわり、運命に操られるがごとく悲劇の連鎖が起こっていくのです。三人吉三は、武家生まれだが途中でグレてしまった「お坊吉三」(おぼうきちさ:お坊はお坊ちゃんの意)、女装の旅役者姿で盗みを働く「お嬢吉三」(おじょうきちさ:実は男)、そして出家したものの、盗賊として身を立てる「和尚吉三」(おしょうきちさ)が主人公。」
👘開演前の売店(物販コーナー)に木ノ下さんが… おみくじ付き大判焼きと『物語の生まれる場所へ』のサイン本購入しました。幕間に美味しく(大きさも良いし本当に美味しく)いただきました。
無料のパンフレットも嬉しい☺️
東京公演5時間たっぷり楽しめて9,500円は上々だと思いますが、 松本公演がお安いので長野のお近くの方、おすすめです!一般:5,400円 U25:2,000円(枚数限定・前売のみ)
なんと!先着順の定員制ですが18歳以下は無料でご招待!しかも、同伴者(保護者)も半額ですってよ。
そして、『#三人吉三廓初買 』松本公演では、先着順の定員制ですが18歳以下は無料でご招待!しかも、同伴者(保護者)も半額になります。詳しくはまつもと市民芸術館まで。
— 木ノ下裕一 (@KINOSHITAyuichi) 2024年9月19日
こうして、各劇場が若い人に舞台芸術をひらこうとしていることは大切なことだし、公共ならではかと思います。 pic.twitter.com/XJ7CRq8au2
【9/24追記】歌舞伎の脚色・演出・評論などを手がける松井今朝子さんのレビュー