ほらほらコーヒーが冷めちゃってるよ 2

好きな人に伝えたいことはできる限り直接伝えます。都々逸作っています。浦和レッズと演劇と映画と音楽が大好き! 田島亮(・中嶋将人)、成河、亀田佳明、イキウメと浜田信也。演出家・藤田俊太郎を応援しています。小林賢太郎・片桐仁、ラーメンズは永遠に好き。B'z、BrandonBoyd&Incubus、JasonMraz、大橋トリオ、Eddie Redmayne

『Saint Jacques La Mecque』★★★★

映画は凄く良かった!面白かった!!!ロードムービーなんだけど、そのタイプの映画にはめずらしく歩き!巡礼だから歩き。それそれの日常に追われ苛立っている仲の悪かった兄姉弟(ピエール・クララ・クロード)が母親の遺産を相続するために嫌々サンティアゴをめざすんだけど、スクリーンいっぱいに広がる(最初のうちは文句タラタラ、携帯電話をかけながら歩く巡礼参加者たちが目にも留めなかった美しい)景色のすばらしさに私はうっとり〜。
しいていえば群像劇だからあと1〜2時間長くないと登場人物9人全員のことがわからないだろうなぁ・・と思う(もう1回観ればもう少しわかるかな)けれど、ステキなシーン満載の映画だった。会社の社長で携帯が手放せない(でも奥さんがアルコール依存症)長男ピエールと彼に見下されているずっと失業中でアル中、妻子にも逃げられた弟クロードの間に挟まれているクララがステキだった。夫は失業中で家族を支えるため高校で教師をしているいつも辛口(←でも的を得たことを言っているので小気味よい)でピエールと取っ組み合いの喧嘩をするような血の気の多い女性かと思ったら、ほんとうはとても暖かく優しい女性だった。母親のために字が読めるようになりたいから参加した失語症ではなく失読症の少年ラムジィ(←字が読めないから目的地がイスラム教聖地の“メッカ”だと思っていたアラブ系移民の男の子)に字を教えるんだけど、その教え方もかっこよかった(この映画のなかでの第1言語と第2言語)。そして母の(ような)優しさが伝わってきた。 映画の最後に映った、母を喜ばせるために文字を覚えたのに母を亡くしてしまったラムジィをクララが自分の家に連れていくと家族が「部屋の用意ができている」とか垂れ幕を用意して待っているシーンにジーーン(T^T)。
歩くのに必要のないもの、多すぎ・重すぎて歩けなくなるものをバサッと捨てどんどんシンプルになったとたん足取りが軽くなりサンティアゴへの旅が楽しくなっていく姿にドキッ(←モノを捨てられない私(-_-;))。その先に幸せが見えたよ。旅(人生)には肩書きとか人種とか宗教なんて関係ない(←そういうシーンが出てくる。宿泊を申し入れた9人を見て肌の色の違う3人を数えなかった神父(-_-))ということが伝わってきた。つらい巡礼で結束も高まり情が芽生える。旅を続けることで生まれる連帯感もあると思うけれど、この映画で彼らのなかに母親思いで欲が全然ない無邪気なラムジィがいたからみんな大切なものがわかったんじゃないかって思った。最後に3兄弟が亡き母の別荘についたとき2階の窓にいた亡霊(?)がとても嬉しそうだったのが印象的。これもまた母の愛の映画だったんだな。←「ボルベール」との2本立ての繋がりはそれだ!
『夜の闇のなかではみんな孤独だけれど、昼間の大地の自然に囲まれた中では、人は安らぎを見いだすのです。それに自然は母なるものです。わたしたちは父権的な社会に生きていますが、本当に守ってくれるのは父権的なものではなく、母性的なものであり、自然は母性的なものの象徴です。』
後から知ったんだけど、この巡礼路は私の好きな本『星の巡礼パウロ・コエーリョ)』と同じコースだったらしい。そうそう原題にメッカとある(Saint Jacques La Mecque)ので、この巡礼は聖地サン・ジャックを目指しているんだけど、ラムジィにとってはその到達地点がどこでもなくメッカだったということだからサン・ジャックに到達したときラムジィが「アラーー、〜なんとか〜」と叫んだの?そうか深いなぁ・・と言ったら、それは深読みしすぎで、この場合のメッカは“聖地”という意味なんじゃないかなって(^.^)。