毎日新聞夕刊にイキウメ『天の敵』の劇評。文明見つめる目鋭く(濱田元子さん)https://mainichi.jp/articles/20170529/dde/012/200/004000c
「橋本が長谷川卯太郎本人で、今年で122歳だと語ったことから、時間は一気に巻き戻されていく。衛生下士官として従軍したシベリア出兵から第二次大戦後の食糧難、飽食の1980年代、そして現在。時間と空間を交錯させながら、橋本の“物語り”をたどる手際が鮮やかだ。」「橋本は禁断の果実に手を出したのか。浜田がクールな表情に狂気を秘めた不気味な存在感。橋本の話に、死を現実に感じる寺泊も揺れ動く。安井が飄逸とした中に複雑な表情をうまく見せる。」「日常とフィクションをさまよいながらも深く刺さるのは、食という根源的な行為が切り口だからであろう。より健康に、より便利に、より豊かにとまい進する社会への警鐘のようにも聞こえる。」
サンケイリビング新聞 ステージ雑感「ゲキネバ!」Vol.4 イキウメ『天の敵』 http://ent.living.jp/review/gekineba/73157/
「物語の力に息詰まるようにしてグングン引き込まれていきますが、、過去の出来事が再現されるシーンのところどころで、現代の傍観者である寺泊のツッコミが入り、不穏な空気に笑いが混ざります。その間合いの絶妙さは、安井さんならでは。」「しかし、笑った後に思い出すのは、寺泊が難病を患っていて、死を間近に見据えている人間だということ。半信半疑の姿勢で長谷川の語りを聞き続けるうちに、寺泊の内側では信と疑のバランスが崩れ、生への渇望が静かに押し寄せて…。そんな喘ぎを観る側に想像させながら、浜田さんと安井さんは終始、取材対象者と記者という距離感を保って、静謐な対話を続けるのでした。」
徳永京子さんのnote(ノート)PARCO STAGE『ダニーと紺碧の海』
『ダニーと紺碧の海』は恋愛劇ではなくて── https://note.mu/k_tokunaga/n/n68e39af1688a
締めの文章「ふたりの感情の起伏を丁寧にとらえて松岡と土井をさり気なく移動させ、紀伊國屋ホールの舞台を広く感じさせなかった──美術の助けもあるが──藤田の演出を頼もしく観た。元・さいたまネクスト・シアターメンバーの土井ケイト(在籍時は土井睦月子(どい・むつきこ))、素晴らしかった。そしてまた、俳優・松岡昌宏のこれからを大きく切り拓いた作品だろう。この人なら、これまでの日本人男優ではなかなかハマらなかった海外戯曲の中年男性がきっと演じられる。プロデューサーさん、オリジナル作品よりも難しい翻訳劇を彼に!」