ほらほらコーヒーが冷めちゃってるよ 2

好きな人に伝えたいことはできる限り直接伝えます。都々逸作っています。浦和レッズと演劇と映画と音楽が大好き! 田島亮(・中嶋将人)、成河、亀田佳明、イキウメと浜田信也。演出家・藤田俊太郎を応援しています。小林賢太郎・片桐仁、ラーメンズは永遠に好き。B'z、BrandonBoyd&Incubus、JasonMraz、大橋トリオ、Eddie Redmayne

『トウキョウソナタ/TOKYO SONATA』★★★★☆

面白かった。小泉今日子はグーグーよりこっちのほうがずっといいな。http://tokyosonata.com/index.html
  ラストに次男がピアノを弾くシーンがとてもいい。ドビュッシーの「月の光」が心に響きます。この映画にはそれ以外のBGMはなく、電車の音(家は線路沿いにある)とか風の音がこの家族を示すように不協和音を奏で、母が見つめる軋んだ床とか、窓からさしこむいびつな光とか風とか・・が殺伐と崩壊寸前の佐々木家を映し出して、そこはある意味ホラー。
『康機器メーカー、総務課長として働く佐々木竜平は、人事部に呼び出され、リストラを宣告される。突然の出来事に、呆然としたまま帰宅するが妻、恵にリストラされたことを言い出せなかった。夕食時、小学校6年生で次男の健二はピアノを習いたいと言い出すが、竜平は反対。翌日から、会社に行くフリをして、毎日ハローワークへ通っていた。ある日、大学生の長男・貴が、世界平和のためにアメリカの軍隊に入りたいと言い出す…。』(goo映画より)
ごちゃごちゃした東京の一角に住む、ありふれた家族のドラマ。自分はこの歳でフリーランスから会社員になることができて、父はもういないけれど家族とまあまあ仲良く(と言っても一人っ子だけど)、サッカーだとか映画だとか好きなことに夢中になる余裕もあって恵まれているので、こんなバラバラの家族がありふれていたら寂しいけれど、日々の忙しいだけの生活の中でどんどん大切なものを見失っていったり、職安に行列ができるような日本ではあるんだろうな〜こういうの、とやけにリアル。
  この映画の中で香川照之演じるリストラされた父がとても可笑しくて切ない。虚勢を張れば張るほど滑稽に映る父。子どもたちは自分たちを守るためにそうなってしまった父を理解できるわけないし・・そういう父を演じた香川さんに脱帽!
  そして小泉今日子演じる母親恵のいくつかのセリフと、笑顔がひとつもない表情が印象的。あの夫婦が恋愛して結婚したかどうかわからないけれど、ソファーで両手を空に伸ばし「誰か私をひっぱって」こんなはずじゃなかった、やり直したいと思う気持ちはなんとなくわかる。そして、きっかけは強盗だけど、自分から日常を飛び出して行き着いた真っ暗な海辺でひとつの光を見つけ(星?それとリンクするように最後の曲は「月の光」)、恵が強盗に言った「自分はひとりしかいません。信じられるのはそれだけじゃないですか」と言うのも印象的。もうひとつ、離婚したほうがいいと長男に言われたとき「じゃあ、あの家のお母さん役は、誰がやるのよ」と言うセリフも心に残る。(身毒丸の親子かるたのシーンを思い出す)親子とか家族って実は隠していることが多くて近いようで遠いし、それぞれの役割を演じていたりする気がする。この父も家族を支える大黒柱を演じていたいからリストラを言えずにいたんだろうし。いざとなったら人は強いと思うんけど・・プライドなんて捨てちゃえば。だから、この映画でもプライドもしがらみもない子どもたちは強い。目的を見つけ自分で前へ進もうとしている強さを持っているのが嬉しい。
ラストシーン、次男が弾くピアノを聴く夫婦の表情がすばらしいです!父が流す涙にプライドをやっと捨てて先に進もうとした決心が見えます。生きていないように見えた母の瞳の色も変わります。冒頭の雨が吹き込む窓とは違ってカーテンがやさしく揺れる窓に柔らかい日差しに小さな希望が見えてホッとしました。
「やり直したい」と叫んでも、そのきっかけがなく、プライドが捨てられずに黒須のように死を選んでしまうのは悲しい。娘はどうなるのよ。
   長男貴役の小柳友と次男健二役の井之脇海もとてもよかった。日本が志願兵募集を受け入れるというフィクションにはびっくり。母が見た白昼夢が怖かった。