イキウメの「散歩する侵略者」劇評（濱田元子さん）「現代照らす愛の物語」
「痛いほど切ない愛の物語である。前川知大作・演出で２００５年の初演以来改訂を重ね上演され、映像化もされた劇団イキウメの代表作。新演出の今回、前川の真骨頂であるＳＦワールドからの現代社会の照射は、よりシンプルで鋭い。」
「「家族」や「所有」といった概念を奪われると人間はどうなるのか。“侵略”されていく様を時に滑稽に描きながら、人間にとって“大切なもの”や社会の病巣を巧みにあぶり出していく前川の筆致がさえる。」「戸惑いから新たな絆の醸成へ、真治への思いを内田が情濃く造形。浜田も変化をうまく見せ、胸打つラストにつなげる。大窪にゾクッとさせる狂気があり、安井は飄逸とした存在感で物語を牽引するなど個性的な俳優が生きる。」「絶望か希望か。外部からの侵略者を描きながらも、本当の敵は内にあり、未来は我々次第なのだという皮肉な現実が不幸にしてリアル。震えがくる。」
