「今後10年間は語り継がれる作品だと思う――。」
成河×亀田佳明『タージマハルの衛兵』レビュー+2019年 新国立劇場<演劇>の仕事を振り返る【コラム】文:上村由紀子さん
「権力と個人、美の定義、極限状態に置かれた人間の心理……さまざまな視点が混在し、多様な解釈が交差する『タージマハルの衛兵』だが、私がなにより打たれたのは舞台上に「演劇のすべて」があったことだ。
成河、亀田佳明というたったふたりの俳優が魅せた”世界”。装置としては存在しないタージマハルの全景や現実には姿を現さない皇帝や建築家、そしてフマーユーンの父のキャラクターが次第に浮かび上がり、戯曲には描かれていない少年時代のふたりの笑い声まではっきり聞こえてくる。それはフマーユーンとバーブルとともに、400年前のムガール帝国に自分も立っているような感覚だった。どこまでも想像の翼を広げ、右脳と左脳を総動員して旅するような時間。」
(撮影:宮川舞子さん)
(撮影:宮川舞子さん)