8月15日の今日は、さいたまネクスト・シアターの最後の舞台であり、旅立ちの日。まだ実感がなかったけれど、ほんとうに今日が最後なの?と思うとちょっと戸惑う。
「2009年に若手俳優育成プロジェクトとしてスタートした「さいたまネクスト・シアター」。集団を率いた蜷川幸雄氏との濃密な時間の中から生まれた作品は、2作品連続で読売演劇大賞優秀作品賞を受賞したほか、さいたまゴールド・シアターとの共演作『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』『リチャード二世』では海外公演を成功させるなど、目覚ましい成果をあげてきた。」
『表現の場を得ることの出来ない無名の青年たちに、芸能する者の本当の表現の力を獲得して欲しい、と私は思っています。無名性を武器に、新しい演劇をつくることもまた公共の劇場の大切な仕事ではないだろうか、というのが私の思いです。』蜷川幸雄
「才能ある若者に活躍の場を作りたい」と1,225名のオーディションを勝ち抜いた44名に蜷川さんが最初に選んだのは福田善之の『真田風雲録』で、日本の現代古典劇から始まり、シェイクスピア作品やギリシャ悲劇などにはタイトルの前に「蒼白の少年少女の〜」(現代のナイーブな若者たち)という表題をつけて、いつも斬新で刺激的な新しい演出で観せてくれた蜷川さん。私は蜷川さん率いる彼らの舞台に私の想像力も育ててもらいました。
何よりびっくりしたのは、主役以外のキャストを容赦なく代えることがあるということでした。一応決められた役もその演技が良くないと他の人に代えられるのでみんな全部の役の台詞を覚えて稽古に入るという… 毎日キャスト表のパネルがガレリアという通路に貼られたのはハムレットからだったかな?ネクストの俳優たちは役を下ろされたり勝ち取ったり… なんなの⁉︎壮絶すぎる…と毎回ドキドキしていました。主役の台詞だって皆覚えて主役の座を狙うだろうから。皆、必死で闘っていました。時々聞こえてきた愛ある辛辣な蜷川語録には笑わせてもらいましたが…俳優たちにはグサグサ刺さっていたでしょうね。
『真田風雲録』(福田善之作、2009年10月15日~11月1日、インサイド・シアター)
『美しきものの伝説』(宮本研作、2010年12月16日~26日、インサイド・シアター)
『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』(シェイクスピア作、2012年2月20日~3月1日、インサイド・シアター)
『2013年・蒼白の少年少女たちによる「オイディプス王』(ソフォクレス作、2013年2月14日〜24日上演、インサイド・シアター)
『2014年・蒼白の少年少女たちによる「カリギュラ』(アルベール・カミュ作、2014年2月15日~27日上演、インサイド・シアター)
さいたまネクスト・シアター+ゴールド・シアター『リチャード二世』(ウィリアム・シェイクスピア作、2015年4月5日~19日上演、インサイド・シアター)
「さいたまゴールド・シアター」との共演作で何度も再演された『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』と『リチャード二世』では3カ国5都市を巡るワールドツアーも。
本公演とは別に上演された【ザ・ファクトリー】シリーズ。彩の国さいたま芸術劇場の各ホールにとらわれず、自由な発想で劇場の中に新しい表現の場を見いだし、作品を発表する試み。
彼らが稽古場で蜷川さんにいつも発表していたエチュード。そのエチュードの課題「テネシー・ウィリアムズ一幕劇集」から秀作を集めたのが
2012年11月【ザ・ファクトリー2】さいたまネクスト・シアター『テネシー・ウィリアムズ一幕劇集』ガレリアと呼ばれる通路や搬入口や大道具製作場という空間で上演された実験的な作品でした。びっくりの連続でした。
2013年8月【ザ・ファクトリー3】さいたまゴールド・シアター×瀬山亜津咲『ワーク・イン・プログレス』
(【ザ・ファクトリー1】はさいたまゴールド・シアター『白鳥の歌』『楽屋』)
2016年に蜷川さんが永眠
「世界最前線」としてさいたまネクスト・シアターが新たな取り組みをスタートさせた『ジハード ーDjihadー』(堀源起くんがやりたいと直談判し、プレゼンしたという)紛争、テロ、難民問題などを抱える地域の演劇に挑戦。さいたまネクスト・シアター_(ゼロ)という表題がつきました。
さいたまネクスト・シアター_(ゼロ)世界最前線の演劇1『ジハード —Djihad— 』[ベルギー] 2018年6月23日(土)~7月1日(日)
さいたまネクスト・シアター 世界最前線の演劇2『第三世代』[ドイツ/イスラエル] 2018年11月8日(木)~18日(日)
さいたまネクスト・シアター 世界最前線の演劇3『朝のライラック』[ヨルダン/パレスチナ] 2019年7月18日(木)〜28日(日)
団員たちは蜷川さん演出の他の大きな作品や彩の国シェイクスピアシリーズだったり、外部の公演にも多数呼ばれるようになり、それらも観に行きました。
そして、2017年9月21日(木)~10月1日(日)岩松了作・演出のさいたまゴールド・シアター第7回公演『薄い桃色のかたまり』にもネクストから多数参加。共演作のイメージでしたが、ゴールドの作品となっています。
2020年12月25日(金)~27日(日)さいたまネクスト・シアター×小川絵梨子『作者を探す六人の登場人物』ルイージ・ピランデッロの作品をリーディング形式で上演。大好きな小川絵梨子さんと発表されたときキャー!やったーー!と小躍りしたのを覚えています。
順番バラバラになりますが、心残りはやっぱり『蜷の綿』の本公演だなぁ。蜷川さんの半生を題材にした『蜷の綿-Nina’s Cotton-』。蜷川さんに依頼され蜷川さんに取材を重ねマームとジプシーの藤田貴大さんによって戯曲化された戯曲。当初、蜷川さんと藤田さんの二つの演出が予定されていた。蜷川さんの体調がすぐれず公演延期。3年余りの時を経て上演された
『蜷の綿 (になのわた)- Nina's Cotton -』リーディング公演 2019年10月13日(日)〜15日(火)
ずっと蜷川さんの演出補佐をされていた井上尊晶さんが演出。もはやリーディングではなく演劇で、とても素晴らしかったけれど、蜷川さんの演出どんなだったなだろう。一回だけ稽古したとかで、すごかったと聞いていたから、私たちには幻だけど、ネクストの皆はその演出を体験できたのでそれは良かったなぁ。彼らの中に残っていることでしょう。
蜷川さんじゃないと…なのかもだけど、私としては、藤田俊太郎演出、蜷川実花美術の『蜷の綿 (になのわた)- Nina's Cotton -』が観たいと今でも思っています。
最終公演の脚本は「次代を担う劇作家を起用したい」という岩松さんからの発案を受けて、演劇カンパニー「ほろびて」を主宰する細川洋平が選ばれたという。いま演劇界で注目を集める劇作家さんで、私は初でした。細川さんがネクスト・シアターのため書き下ろした新作が『雨花(うか)のけもの』、岩松さんとの共作的なようです。
その千秋楽が今日。
いつも新しくて刺激的で素晴らしい舞台をたくさん観せてもらいました。楽しかったなぁ〜。
最後まで残った1期生から4期生までのメンバー14人がネクストとしてさい芸に立つことはもうないけれど蜷川さんに鍛えられて身につけた根性と実力は裏切らないから、これから活躍するでしょう。それが育ててくれた蜷川さんとさいたま芸術劇場への恩返しだと思う。凱旋待っています。がんばれ、みんな!第2ステージへ!
ただ毎公演終わると会って話せた彼らと、おしゃべりすることも許されず、直接挨拶することさえ出来ないのはとても寂しいよー😔最後なのに、コロナが憎い。
13年間の活動の集大成の泣いても笑ってもラストステージ。ドキドキしてきた!見届けて来ます。
起きてからベッドの上で一気に書いたので腕が震えてます(笑)かなり乱文です。あとで読み直すわ。そして追記するかも。