シアタートラムにてイキウメ『人魂を届けに』3回目で、ラスト人魂。立ち見もたくさんいました〜。私は前回と同じE列センターブロックのお席。友の会ありがとう。
大好き。
いつにもなくかみむら周平さんの音楽が流れていないその空間は鳥がさえずり深い霧が立ちこめる森の中で、薄っすらと霧が晴れていくと教会の廃墟(かつては美しいステンドグラスがあったであろう長い窓)のような場所が現れて、そこに導かれて来たような感覚になる。この写真の八雲さんのように。
「中国には「魂魄(こんぱく)」という言葉があって、「魂」も「魄」も両方とも「たましい」という意味なんですけど、魂は死んだら天に上っていくけれど、魄は死んだ肉体に残り続けると言われていて、魄が残っているから肉体を焼かないといけない、という考え方なんだそうです。」と前川さん。
人魂(ひとだま)となって、極刑を生き延びた政治犯は、
小さな箱に入れられて、独房の隅に置かれている。
耳を澄ますと、今もときどき小言をつぶやく。
「寒い・・」「寂しい・・」「お母さん・・」
「恩赦である(捨ててこい)」と偉い人は言った。
生真面目な刑務官は、箱入りの魂を、その母親に届けることにした。
樹海のような森の奥へ
初日観た後も書いたけれど。葵(浜田信也)が清武(大窪人衛)を使って、棗(藤原季節)に「押し売り」ではなく1万円払って人の魂を削る「押し買い」の話をするプロローグから始まる。(何回観てもその浜ちゃんにドキドキする不純な私❤️)
電波も郵便も届かない樹海のような森の中に住む篠井英介さんが演じる「母」と呼ばれる「山鳥」の家に、八雲(安井順平)という刑務官が「人魂」を届けに来る。葵、鹿子(森下創)、清武、棗ナツメ、そして、とても具合の悪そうな男/公安警察だろう陣(森隆二)が雑魚寝をしている。そこは社会や他者と折り合いがつけられず孤独を深めていった人たちがたどり着いた場所だった(サンクチュアリsanctuaryだと思う)。
人魂から人の心に届く「寒い」「寂しい」「お母さん・・」の声。山鳥には聞こえない声を全員が担う演出が最後まで生きる。観ていない人に説明するのがとても難しい。
「寒い・・」「寂しい・・」「お母さん・・」
八雲がその場所に残って自分のことを喋ってしまうのは八雲も妻や息子に向き合えず孤独を深めていった人だったから(ちょっと宗教とか自己開発セミナーっぽい)。八雲の話に登場する「あなたには時々魂が見えないときがある」と言う妻が葵(浜田信也)で語られ、失踪した息子が棗(藤原季節)で語られるのだけど、実際、葵は妻を失い、棗は父を捨てて森へ入ったエピソードが本人たちから語られる構造。
八雲が一人で行ったコンサートでミューシャン(清武役の人衛くんが演じる)が歌った「The Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて byサリンジャー)ならぬ「The Catcher in the Forest」。そのミュージシャンは発砲事件を起こし会場に火をつける、八雲はその流れ弾で足を負傷した。そのミュージシャンは山鳥のほんとうの息子だという。ずっといじめられてきてとうとう工場を放火した清武とミュージシャン。観ていない人に説明するのがとても難しいのだけれど、八雲の話と彼らが一人二役でリンクしているのです。
そして、最後は「Catcherになる」。「お母さんの志を継いで、こういう場所を作りたい」と棗、「僕は落ちてくる受刑者を受け止めるキャッチャーになる」と八雲。そういう場所こそ「母」なのかも。
あーーーやっぱりうまく書けない。でも、魂を誰かに受け止めてほしいし、削られた魂の隙間を誰かに埋めてほしいし、魂を受け止められる度量のある人間になりたい。