シャンテで映画『関心領域』 ジョナサン・グレイザー監督。
A24の作品だと映画館で知りました。
第2次世界大戦下のアウシュビッツ強制収容所の隣に住む所長(司令官)のルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)と妻のヘートヴィヒ(ザンドラ・ヒュラー)と子どもたち家族の日常を描いたイギリスの作家マーティン・エイミスの同名小説を原案に、ジョナサン・グレイザー監督が10年の歳月をかけて映画化した作品。
「第76回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞して以来、各地の映画賞を続々受賞し第81回ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)ほか3部門にノミネート、第77回英国アカデミー賞では英国作品賞、外国語映画賞、音響賞を受賞し、第96回アカデミー賞®では国際長編映画賞と音響賞の2部門で受賞。」
〈「The Zone of Interest(関心領域)」とは、第二次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュヴィッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉。〉
夫が所長のおかげ(妻にとっては「夫のおかげ」)で憧れの贅沢な暮らしのためにアウシュビッツ(映画はユダヤ人への虐殺行為や暴力は映らない)から目を逸らして生活している妻や子どもたち。そして使用人たち。
ピクニックのシーンから始まり、手入れの行き届いたお庭のプールで遊び、収容所に入った囚人たちの持ち物が屋敷に持ち込まれる。 毛皮のコートを試着する妻(ザンドラ・ヒュラー)©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
壁の向こうの収容所の上空にのぼる煙が遺体を焼却した煙だと私たち観客は知っている。
zone of interest…彼らの関心の領域は贅沢な暮らしにある。なのでルドルフの浮気からも目を逸らす妻(気づいているよね?)
というかアウシュヴィッツの司令官ルドルフが妻より普通の人に見えるのも怖い。©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
ずっと流れている不穏な音、銃声、人の叫び声、、とにかく音が怖い。そして音楽も怖い。
冒頭から複数回挟まる何も映っていない音だけの画面も怖い。
終盤に映る現在のアウシュヴィッツ=ビルケナウ国立博物館(Państwowe Muzeum Auschwitz – Birkenau)の映像。清掃している清掃員の両脇の部屋の中におびただしい数の、虐殺されたユダヤ人たちの押収された靴の山、松葉杖の山、その迫力。ジェノサイトの証拠のほんの一部分なのに背筋がさらに凍る…
私は座席にはりついたまま動けず。106分もあったの?となりました。
あらすじ「1945年、ポーランド。 第2次世界大戦下のアウシュビッツ強制収容所と壁1枚で隣接する瀟洒な邸宅で、ドイツ人のヘス一家が裕福な生活を送っていた。壁の向こう側では昼夜を問わず不穏な音が鳴り響き、煙が立ち上っている。
父のルドルフ(クリスティアン・フリーデル)は、所長を務める収容所へ毎朝馬で出勤し、休日は妻のヘートヴィヒ(ザンドラ・ヒュラー)や5人の子供たちと、湖畔でのピクニックを満喫する。長男はナチスの少年兵だ。美しい庭と家を愛する妻は、夫の昇格に伴うドイツ本部への転居を告げられ、頑なに拒絶する。」
あの音が耳にはりついて今夜は寝付けそうにない。
公式サイト
パンフレットは完売。
監督・脚本:ジョナサン・グレイザー Jonathan Glazer 原作:マーティン・エイミス 撮影監督:ウカシュ・ジャル 音楽:ミカ・レヴィ
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
原題:The Zone of Interest|2023年|アメリカ・イギリス・ポーランド映画
途中で何度か映るサーモグラフィで描かれる林檎を拾っては置いてゆく少女が気になったのですが、監督が説明していました。
「林檎を土に埋めていた謎の少女には実在のモデルがいて、アレクサンドラ・ビストロン・コロジエイジチェックという人物。アレクサンドラは監督がポーランドでリサーチを重ねている時に出会った90歳(当時)の女性で、12歳の時に彼女はポーランドのレジスタンスの一員として度々収容者にこっそりと食事を与えていたという。その話を聞き、監督はアレクサンドラの物語を書くことを決意。別のインタビューでは「照明を使わないと決めていたため、夜でも人の形を撮影できるサーモカメラで撮影され、彼女を単なる人間ではなく“エネルギー”として描いた」とも話している。」「アレクサンドラは映画の完成前に亡くなったが、アカデミー賞のスピーチでジョナサン・グレイザー監督は彼女に感謝の言葉を贈った。家、ピアノ、ワンピースまで、すべてアレクサンドラの私物を借りて撮影したシーンでは、実際にアウシュビッツの収容者であったヨセフ・ウルフが1943年に書いた「sunbeam」という楽曲が黄色い日本語字幕の歌詞付きで奏でられている。」
#関心領域
— 『関心領域』公式アカウント (@ZOI_movie) 2024年5月31日
★★★
特別映像④
監督らが明かす“本編に込めた希望”
サーモグラフィで描かれる少女は一体?
ピアノの曲は何?
など、観る前・観た後にもご覧頂ける、監督たちが本作の演出の意図を語る映像です。
★★★
絶賛上映中 pic.twitter.com/JcaxqyqW5I
ロケはセットではなくヘス家が実際に暮らした家。アウシュビッツの隣の…。何台もの無人カメラをセットし、演者にカメラが見えないように撮影。
#関心領域
— 『関心領域』公式アカウント (@ZOI_movie) 2024年5月24日
★★★
特別映像3
俳優が語る関心領域
★★★
絶賛上映中https://t.co/xpDNskCRCT pic.twitter.com/eLjs0GQw9Q
【再掲】原作の登場人物をほとんどカット…タイトルに張り巡らされた二重三重の意味とは? 映画『関心領域』徹底考察&評価レビュー(荻野洋一さん)
「 “歴史”で終わらせていない。“現在”の映画として、観客を意識させるよう働きかける仕組みになっている。」
「 関心/無関心の領域範囲を最も雄弁に証立てる役割を担ったのは、画面ではなく音響だったわけである。象徴的なシーンは、妻ヘートヴィヒの母親がドイツ国内から孫の顔を見にきてヘス邸に宿泊するが、夜中じゅう途絶えることのない収容所の音で寝付けず、ウィスキーをがぶ飲みしているショットである。翌朝早く、娘に置き手紙だけを残して母親は邸宅を後にしている。」
「ホロコーストの犠牲者たちの子孫である人工国家がガザ地区やヨルダン川西岸地区で現在おこなっていることについて、ジョナサン・グレイザーがアカデミー賞の受賞スピーチで、「ユダヤ人としての彼ら自身(グレイザー家は曽祖父の代にイギリスに移住した東欧系ユダヤ人の家系)の存在やホロコーストが、ガザでの占領行為に乗っ取られていることに異議を唱えるために、ここに立っている」と宣言した。」
「グレイザーの画面作りの主眼はコンパートメント化(分離隔離化)である。」 「ナチスによる人種差別的コンパートメント化が最初にあって、より広範囲なドイツ国民の東方フロンティア拡大としてのコンパートメント化が将来展望としてあり、さらに主人公夫婦の邪悪な関心範囲のコンパートメント化がちょうど映画のセンターに来るようにしつらえられ、それを外側からとらえる映画行為そのものも不気味な方法論でコンパートメント化されている。二重、三重の隔離政策である。」
画面作りのカメラワークを気にしながらもう一回観たくなってる。
デカローグもポーランド。アウシュビッツ(1940-1945)の記憶がまだ新しい時代の物語だということを次に観る時、『関心領域』の彼らを思い出すことになりそう。
ジョナサン・グレイザー (英:Jonathan Glazer、1965年3月26日 - ) は、イギリスの映像作家。主に映画、CM、ミュージック・ビデオを手がける。
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