Sigur Rosシガー・ロスの音楽とともに「どこでもない」場所へ 『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』が示した“守る意思” (ラブムーさん:ライター・詩人・ゲーム翻訳者)
「〜原作の持つ魅力をスポイルせずにゲーム化された作品はあまり多くはないように思う。いや、正直に書こう。筆者はミッキーもスヌーピーもプーさんも幼少期からこよなく愛してきた者だが、少なくともその3つに関して、心から満足できるような「ゲーム化」はほとんどなかったように感じている。その多くが既存のゲームジャンルの雛形にキャラクターを無理に「はめこんだ」ようなもの、「資本主義経済」に利用されていると感じてしまうものばかりだった感は否めない。また、そうした事態が「キャラクターものあるある」といった具合に(ある種の諦観とともに)見過ごされがちだったことも、愛すべきキャラクターのゲーム化に対する不安を助長していたように思う。」
「〜本作の丁寧なゲームデザインはとことん無駄がなく、洗練されている。原作ファンなら、あるいはファンでなくとも、制作者が「ムーミン」という世界を「守る」ことにどれほど意識的か、伝わってくるのではないか。その繊細な心配りと確固とした意思は、ある住民の自然破壊的な行為(とはいえ、それも「ムーミン谷にとって良かれ」と為されたのだが)と、その手下である警官たちから故郷を守らんとする、主人公・スナフキンの姿に自然と重なる。」
シガーロスについて
「〜ムーミン谷も、フィンランドを初めとする北欧のような場所でありながら、「どこでもない」場所なのだ。それはシガー・ロスが「どこでもない国のどこでもない言葉」を用いて、音楽シーンに鮮烈に登場したことと見事に呼応しているように思う。そんなシガー・ロスの楽曲を今作のテーマソングに採用した時点で、本作の素晴らしさは約束されていた。さらに言えば、シガー・ロスの存在とその音楽は、本作制作における大きな精神的支柱になっていたのではないか? 本作に関する、キャータン・スヴェインソン(シガー・ロスのメンバー)の貴重なインタビューを聴いているとそんな気さえするのだ。」