ほらほらコーヒーが冷めちゃってるよ 2

好きな人に伝えたいことはできる限り直接伝えます。都々逸作っています。浦和レッズと演劇と映画と音楽が大好き! 田島亮(・中嶋将人)、成河、亀田佳明、イキウメと浜田信也。演出家・藤田俊太郎を応援しています。小林賢太郎・片桐仁、ラーメンズは永遠に好き。B'z、BrandonBoyd&Incubus、JasonMraz、大橋トリオ、Eddie Redmayne

『ガザ・モノローグ』朗読 動画

【『ガザ・モノローグ』朗読Ⅰ 動画公開】
2024年2月24日(土)@立教大学池袋キャンパスタッカーホール

13:10~朗読Ⅰ の動画をYouTubeで公開されました!
📖『ガザモノローグ 2023』朗読 Ⅰ 

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亀田佳明「ラマー」(Lama/لمى)

上演台本: 生田みゆき
翻訳監修: 渡辺真帆

出演:志賀澤子、沖中千英乃、手打隆盛、高山春夫、武田知久、滝沢花野、亀田佳明、椎木美月、椎名一浩、岩男海史、水野小論、梅村綾子

日本語テキスト(随時公開)・寄付代行先はこちら gazamonologues-jp.com

とにかく早く停戦して。

https://gazamonologuesjp.files.wordpress.com/2024/03/240224-e69c97e8aaade58fb0e69cac-e7ab8be69599e5a4a7e5ada6.pdf2月24日『ガザ・モノローグ』朗読★★★★★ 

大好きな亀田佳明さんが朗読した本のみピックアップ

「ラマー」朗読台本:生田みゆき 翻訳監修:渡辺真帆
「戦車が家を砲撃しはじめたら、ただちにそこを離れなければならない。戦 車は無差別に砲撃するから。悪意をもって破壊し、警告なしに人を殺すか ら。 「全く頭のいかれた怪物だ。見境なく建物を切り裂いていく......。」アブー・ アフマドは服を入れたリュックと、大事な書類の入ったカバンとを抱えなが ら、そう考えた。この書類をまとめたカバンは、ガザのどの家にも常備されて いる。中に入っているのは、ID カード、パスポート、出生証明書、賃貸契約 書、大学の卒業証書、そして UNRWA のカード。これが最も重要だ。この カードが、自身が難民であること、食糧支援などを受ける資格があることを 証明してくれるからだ。
彼は、妻、子供たち、車椅子の母、孫たちを連れて、急いで自宅を出た。み んなで通りを走る。炸裂弾の音が耳をつんざく。火山が噴火したかのように、 まわりに石が飛んでくる。アブー・アフマドは母の車椅子を押しながら、毎分 毎秒、家族の無事を確認する。今は怪我なんてどうでもいい。転んで起き 上がれないものはいないか? 誰もはぐれていないか? 彼の眼も脳みそ も、忙しく動き回る。まるで千の目と千の脳みそが備わっているかのように。
彼らは走り続け、とうとう空爆地帯から抜け出した。一息つくと、次はサラー フッディーン通りを目指して歩き出す。ガザ渓谷の先の安全地帯へ、つまり南へ行くためだ。 アブー・アフマドの頭には、テレビドラマー「アッ=タグリーバ:故郷喪失」の 離郷シーンが思い浮かんだ。悲しみを誘う音楽が流れる中、カバンを背負 って亀のようにのろのろと歩く難民たち。彼は怒りを覚えた。おい、こっちは こんな急いで 6000mも移動したんだぞ。いやいや、ドラマのことは忘れて、 進み続けなければ。
検問の戦車の車列が近づいてくると、突然人波に飲み込まれた。何処から 来たんだ? この人たちは! あの難民追放シーンを撮るために、監督のハ ーティム・アリーは大勢のエキストラをかき集めないといけなかったらしい... いや、私は何を考えてるんだ。今は目の前のことに集中しろ。 更に戦車に近づくと、クワットコプターが飛んでくる。怪しい者は即座に撃た れる。絶対にやってはいけないことが 2 つ。立ち止まることと、手を下ろすこ と。バッグを持っていても手は上げ続けなければいけない。もしバッグを落 とし、拾おうと屈んだら、即座に撃たれて、殺される。
アブー・アフマドは家族に呼びかけた。大丈夫だ、前へ進もう、手を離すな、 もっとくっつこう。前へ前へ、足を止めるな。数分後には、戦車は道をあけて くれる。必ず、すぐに通り抜けられる。
なんてことだ。まるでガザの人口が 200 万でなく 1 億人になったかのよう だ。さぁ行こう。ゲートが開いた、急がないと。すると突然、戦車の上にいた 兵士が言う。「お前、女の乗った車椅子を押しているお前だ、車椅子を置い ていけ」「はい、今すぐ」アブー・アフマドは母を抱き抱え、戦車の間を通り抜けるまで走り続けた。しかし、南部まではだいぶ距離がある。どうやって母 を運べばいい? 車椅子を取り戻さなければ! 命がかかった決断だが問 題ない。私の母が死ぬか、私が死ぬかだ。アブー・アフマドは母を地面に置 くと、車椅子に向かって走っていった。シャハーダを唱え、いつ死んでもい いように身構えた。そしてどうにか、彼は車椅子を取り戻し、戦車が道を塞 ぐ前になんとか戻ることができた。本当に最後の最後、封鎖される直前に。 彼とその家族はまた走りはじめた。その間も、兵士の声はずっと「止まるな、 止まるな」と呼びかけていた。
アブー・アフマドは家族を確認した。8歳の娘がいない、ラマーだ。彼は家 族に声をかける。「ラマーはどこだ? ラマーはどこにいる!?」。誰も答え なかった。すると息子のアフマドが言った。「戻らなきゃ」。狂ってる、奴らに 撃たれるにきまってる。止まることは禁じられているのに、ましてや戻るなん て。息子よ、もう行こう。父親は無理矢理息子を引っ張りながら呟く。「神が ラマーを守ってくれますように。ラマー。私の小さな娘、愛しい娘。」
南部を目指して歩きながら、ずっと、ラマーの姿が脳裏にうかんだ。彼女 が生まれた日のこと、はじめて歩いた日のこと。眠る前には歌や物語を聴か せてやった。それからはじめて小さなカバンをもって幼稚園に行った日、ラ マーはまるで色鮮やかな蝶のようだった。ラマー。私の心、私の喜び。私の 愛するラマー。 彼は妻の声で我に返った。「ヌセイラートキャンプの入り口に着いたわ。この まま待ちましょう。誰かがラマーと一緒かもしれない。」
彼らは通りに座り続ける。ふと、行き交う人々の顔が険しく、埃にまみれてい るのに気がつく。その顔には、この世のありとあらゆる悲しみ、怒り、不条理 があった。しかし、自分の家族の顔を見ると、更に険しく惨めだった。「神が ラマーを守ってくれますように。」彼らは3時間じっと座って待ち続けた。
突然、人ごみが割れると、赤ちゃんを連れた男性が、ラマーの手を引いて歩 いて来た。ラマーは一目散に母親のもとへと走ってくる。皆涙を流し、男に 感謝した。
一家はハーン・ユーニスにたどり着き、UNRWA の傘下にある工業用建物 に身を寄せている。破壊された自宅に帰る日を待ちながら。実話。」アリー・アブー・ヤースィーン

【追記】📖『ガザモノローグ 2023』朗読Ⅱ も公開されました。

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西尾友樹さん「ラマー」(Lama/لمى)

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