マームとジプシーの「書を捨てよ町へ出よう」劇評(山本健一さん)『澄んだ叙情と絶望、大胆に現代化』
『時代認識もさることながら、大胆な手法による効果が大きい。寺山のコラージュ作品を、更にコラージュする。映画は自分探しをする70年代の若者を描いた崩壊家族の物語。幻想を挟み込み、新しいイメージを作る実験色が濃い。主筋は同じだが、藤田は更に加工する。』『冒頭、視覚の仕組みを説明する眼球の解剖場面には、意表を突かれた。ミナ ペルホネンの衣装を着たファッションショーの、臆面のなさ。又吉直樹と歌人の穂村弘が映像でユーモラスに出演する。現代風俗をまとった素材が、唐突に衝突し、芸能的でおしゃれな都会感覚を醸す。』『藤田演出の特徴だが、俳優は、せりふを繰り返し、時に棒読みのように感情表現を漂白する。スピードも速く、体の動きがリズミカル。主人公(村上虹郎)の妹(青柳いづみ)が集団に乱暴される場面など、マット体操のよう。音楽も反抗のロックでなく、山本達久のドラムが舞台を軽やかに律動させる。人物の存在感というより、若者と時代への批評意識が露わだ。』