『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』劇評「抗えない運命 等身大で描く」（堀切 克洋さん）「ハムレットの監視役として王に呼び出されたロズ（生田斗真）とギル（菅田将暉）は、稽古しないまま本番の舞台にあげられてしまった俳優のよう。自分たちの存在のわからなさをシェイクスピアの戯曲に書き込まれたわずかな情報から探ろうと試みる。」「観客は「ハムレット」の劇世界を裏側から見ているような気分だ。開演５分前にはスタッフが舞台で忙しく準備をはじめる演出が凝らされているが、ここは文字どおりの意味で「舞台裏」なのだ。」「闇に包まれたアリーナを半円形に囲む階段席の背後から本家ハムレットの人物たちが現れては消えてゆく（伊藤雅子美術、勝柴次朗照明）。俳優では、王クローディアス（小野武彦）の淡々としたセリフ、旅役者一座の座長（半海一晃）の道化師的な演技がロズとギルを裏から支える。」「一方、要となる２人組はセリフを追うので精一杯（せいいっぱい）に見えてしまうのが残念だ。同音異義語の多い日本語では、言葉遊びを聞かせる工夫が必要。客席の広さも十分に感じてほしい。演出家の力不足と見られても仕方がないだろう。」「翻訳・演出の小川絵梨子は抗えない運命に翻弄される２人を等身大の人間として描く。コインの同じ面が出続けるような世界情勢に対し、私たちはギルのように内障的に考えるのか、ロズのように楽観的に受け入れるのか。」「２人の無意味な死は「不条理」の一言ですませてよいものではない。なぜなら今の時代頃「関節が外れている」からだ。
