ほらほらコーヒーが冷めちゃってるよ 2

好きな人に伝えたいことはできる限り直接伝えます。都々逸作っています。浦和レッズと演劇と映画と音楽が大好き! 田島亮(・中嶋将人)、成河、亀田佳明、イキウメと浜田信也。演出家・藤田俊太郎を応援しています。小林賢太郎・片桐仁、ラーメンズは永遠に好き。B'z、BrandonBoyd&Incubus、JasonMraz、大橋トリオ、Eddie Redmayne

音楽劇『ある馬の物語』座談会

音楽劇『ある馬の物語』座談会 成河・別所哲也小西遼生音月桂×白井晃 - ぴあエンタメ情報 (取材・文:上野紀子さん 撮影:塚田史香さん)

別所「いろんな仕掛けがある舞台だなと感じていますね。馬を演じる皆さんの動きも非常にアクティブで。ただ大半は、ホルストメールという馬を演じる成河さんが担っていて、火に油を注ぐように動いていらっしゃるかなと(笑)。」白井「(トルストイが100年以上前に書いた小説を)ロゾフスキーさんの脚本と音楽は50年近く前に作られたものですが、小説から立ち上げたからこそ出来るような表現方法がいっぱい組み込まれているんですね。例えば、最初にいきなりお客さんに向かって話し出したり。また、進行を皆で担っていくようなところはギリシャ悲劇的でもあり、ブレヒト的でもあり。そういう様式の戯曲で、セリフのスキマはある程度自由度があったので、好きに書き込んでいったと言いますか(笑)。これは出来るかどうか分かりませんよ、でも皆で知恵を絞ったらこんなイメージの劇空間が出来るかもしれない……というようなことを机上の空論としてト書きにはめていったという感じです。実際に今、これは難しいだろうという僕の頭の中のイメージを、無謀にトライしてくれるホルストメールがいて……。」
成河「セリフに白井さんのこだわりを感じて、すごく嬉しいんですよ。ロゾフスキーさんの戯曲もかなり詩的で、面白そうだけれどずいぶん無茶なことを書くなと思っていたのですが、白井さんの上演台本を読んだら、それのさらに上をいく楽しい無茶がたくさん書かれていて(笑)。信頼出来るスタッフさんがいるから大丈夫、この稽古場で思いっきり子供になって実験してみよう! という白井さんの思いが伝わってきました。」

成河「要するに、トルストイがここに登場する貴族たちをどのように見ていたのか、ですよね。公爵にしても、全てを所有して完璧に見える伯爵にしても、その後にロシア革命が起こって貴族社会は崩壊していく。そのことを現代の我々は知っているわけです。そういう目線で見た時に、「何をもって幸せと言えるのか」ということを考えさせる作品に、必ずやなるということですね。」
白井「本当にそう。人間の本質は何も変わらないんだなということが、トルストイが100年以上前に書いたこの作品に明確に描かれています。しかもこの舞台、本当は3年前に上演するはずだったのですが、この3年のあいだに、ここに書かれていることがより浮き彫りになったように思うんですね。経済の状況にしても、人の心にある所有欲の高まりにしても……。変わることのない人間の欲望、その愚かさ、儚さについて、馬という媒介を通しているからこそダイレクトに語っている。そこが非常に面白く、今に通じる「今」の作品になっていると思います。」