ほらほらコーヒーが冷めちゃってるよ 2

好きな人に伝えたいことはできる限り直接伝えます。都々逸作っています。浦和レッズと演劇と映画と音楽が大好き! 田島亮(・中嶋将人)、成河、亀田佳明、イキウメと浜田信也。演出家・藤田俊太郎を応援しています。小林賢太郎・片桐仁、ラーメンズは永遠に好き。B'z、BrandonBoyd&Incubus、JasonMraz、大橋トリオ、Eddie Redmayne

SEVEN HEARTSさんのアルカディア劇評 

SEVEN HEARTS(阪 清和さん)の【舞台】アルカディア(2016)劇評 http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/archives/66216615.html
「私はトム・ストッパードと聞くとお尻のあたりがむずむずと痛くなってくるのだが、それは彼の一大歴史絵巻の9時間連続上演に付き合ったからである。最初は別々に別の日付で3回に分けて見ようかとずるいことを考えていたのだが、当時連続インタビューを続けていた蜷川幸雄さんに近く演出するというこの作品についてインタビューをしたとき、あまりにもいい表情で「実に面白いよ」と言われ、なおかつ「観客も共犯者だ」と言われたことで、9時間という未知な世界へと旅立つ覚悟を決めてしまった経緯があるのである。」「しかし実際はお尻の痛みなど感じる暇もないほど、ストッパードの劇に引き付けられていた。歴史絵巻とはいっても、描かれるのは人間のいつの世も変わらぬ営み。もちろん時代のダイナミックなうねりが人々を動かし、のみこみ、それに抗う人々の行動もエンターテインメント性に満ち、それを一種の芸術として定着させていく蜷川さんの演出の才気もあって、心をわしづかみにされた記憶がある。だから、はっと気づいた時には既に7時間ほどが経過していたのだ。」
「天才であるトマシナはともかく、この作品の時間の中で最も成長を遂げる人物かもしれないヴァレンタインを演じる浦井は、悩んで悩んで大きくなるを地で行く人間的な成長を描いて見せる。ミュージカルでの清新なイメージから一気に脱皮することに成功したシェイクスピア劇の舞台「ヘンリー六世」でのヘンリー六世役(第44回紀伊国屋演劇賞個人賞受賞)で見せたような、若さゆえの弱さと強さを交錯させるような図式がここにもある。滅していく王とはまるで違うが苦悩の根本は似ていなくもない。」「浦井に先んじること数年。「ミュージカル界の貴公子」的な存在から一足早く成長を果たしたのはセプティマスを演じる井上。井上ひさしの「組曲虐殺」で見せた小林多喜二の生涯を描く迫真の演技がその成長の大きなばねになった。音楽的な要素も濃かったこの作品は井上の歌唱力が必要であったことは間違いないのだが、井上はそこであまりにも多くのことを学んだ。深みを増した演技力は、裏と表がある人物の造形において、ますます磨かれていると言ってよい。セプティマスは人当たりもよく、学問に秀でていて、天才トマシナの才気を余裕を持って受け止められるだけの懐の深さがある。そんな人物像を井上は丹念に観察して創り上げながらも、人生やこの貴族社会をするりするりと生き抜いていくしたたかさやずるさをも兼ね備えたセプティマスの真実をどんどん付加して、一見スマートな男の無様さや不器用さも垣間見せる。」 
「トマシナを演じる趣里はある有名な俳優を両親に持つ新進女優で、そのことで一部のマスコミに注目されたこともあったが、小劇場の作品に出続けていた彼女をずっと見続けていた私は、見方がまったく違う。彼女はその演技にも容姿にも天賦の妖精性をまとっており、演じることで自然な異化作用が発揮できるほか、少女の無垢や無邪気を純粋なものと残酷なものとに演じ分けることができる才能がある。そのことを小劇場や中劇場などでの演技で磨き上げてきた結果が今の彼女をつくっていて、両親のDNAは少なくともいまここの場所では関係がない。もうすでにその演技で世間や演劇界の注目を集められる存在になったのだから、両親の存在は二次的な情報になる。もちろんそれは彼女にとって最大の財産であり、いつかそれもまた大きな花を咲かすだろう。」