国際シンポジウム 「世界とつながる日本文学 ~after murakami~」
『世界とつながる日本文学 ~after murakami~』①
★トークを同時通訳で聴きながらメモ📝したので、間違いもあると思います。「それ違うと思うよ」とご指摘いただけると助かります。
第2セッション:「表現者にとっての日本文学」
【ご登壇者】アミール・クリガー/インバル・ピント
アミール・クリガー(演劇・映画作家、ドラマトゥルク、教師。村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』の舞台化、サラ・ケインの戯曲「4.48 Psychosis」のイスラエル初演などに加え、自身のオリジナル作品などさまざまな演劇作品の脚本、演出、デザインを手がけ、高い評価と賞を得ている。ダニ・ローゼンバーグ監督とともに脚本を担当した映画『The Vanishing Soldier』は、2023年ロカルノ映画祭など多くの国際映画祭の正式招待されるともに、イスラエル映画アカデミー賞の最優秀オリジナル脚本賞を含む11部門に選出されている。1979年イスラエル生まれ。)
インバル・ピント(イスラエルの振付家、演出家、舞台美術、衣装デザイナー。手がけた作品はイスラエル・ダンス史のマイルストーンとなり、世界中で高い評価を得ている。2019年に東京でアミール・クリガーとともに舞台化した村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』では、演出、振付、美術を手がけた。最近ではイスラエル・オペラで長編デュオ作品『リビングルーム』の振付とルッジェーロ・レオンカヴァッロ『道化師』の演出とデザインを手がけている。)
(まとめられないのでメモしたところを箇条書きで)
インバル🎤 オペラの演出を手がけていて動きをどう表現するか、絵画とマジカルなリアリズムを意識していた。
10年前にHarukiを表現したいと思った。本を読んで、新しい色をつける、新しい光をあてる、匂いを感じ、体で表現できると思った。
「内部から駆動する動物」肉体的な動きを言葉に置き換えること。『ねじまき鳥クロニクル』の岡田トオルを2人にしたのは「人格の分裂」と「魂がどう引き裂かれているか」、本の感情を表現することにつとめた。
アミール🎤 日本とイスラエルの違い。イスラエルは自己中心的で利己的。(イスラエルとガザの今の情勢にも言える。暴力・悪・人間の残酷さは普遍的)
日本・・死は消えてゆくものではない。死と生が同じ次元にある。
イメージについては階層されるもの。(←カイソウ:レイヤーのことかなと「階層」にしましたが、演劇では「回想」もレイヤーで表現されるので「回想」かも。)
インバル🎤 日本とイスラエルの俳優の違いは言語で覚えなくても体で表現できることだった。村上春樹は体で表現できる。
アミール🎤 イスラエルは人を物のように扱ってしまうことがあるけれど、村上春樹は違っていた。日本の文化・映画からインスパイアされた(黒澤明、今村昌平、大島渚など)。日本と欧米では生死のスタンス・芸術的なモラリティがまるで違う。欧米は自分を正当化し、白黒ハッキリ対立させる。
村上春樹の「本を説明したくなかった」→「ねじまき鳥」を決めるは間違いで、そこに存在するだけでいい。
インバル🎤 最初に受けた絵本『100万回生きたねこ』の演出(←私がインバル・ピントを知った衝撃的な出会いの作品です。)『100万回生きたねこ』には「死は生の一部である」ということが描かれいた。『ねじまき鳥クロニクル』も全て体で表現できる。ダンスは体内における対話だと。
この後、壇上に椅子が2つ並べられ、音楽なし、岡田トオル(成河&渡辺大知)の交互のセリフでダンスパフォーマンスが披露されました。
「クミコがいなくなって10日経った」〜「イヤリングをどこで買ったのだろう」までのシーン。音楽なしの緊迫した中でパフォーマンス、凄かったーーー。
先週10月28日に早稲田大学国際会議場で、国際シンポジウム「世界とつながる日本文学〜after murakami〜」が開催されました。インパル・ピントさんとアミール・クリガーさんの登壇の中で、成河と渡辺大知さんが舞台『ねじまき鳥クロニクル』の中から二人のトオルの場面を実演しました。 pic.twitter.com/ju06PzrJXR
— 成河スタッフ オフィシャル (@tw_de_songha_sc) 2023年11月1日
成河くんのブログ「村上春樹ライブラリー」http://web-dorama.jugem.jp/?day=20231028
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続いての【ご登壇者】はチップ・キッド(作家ニューヨーク市在住の受賞歴のあるグラフィックデザイナー兼作家。37年間で1,600点以上の本の表紙をデザインしている。手がけた作家は、30年以上にわたって表紙をデザインしてきた村上春樹のほか、コーマック・マッカーシー、マイケル・クライトン、カズオ・イシグロ、手塚治虫、田亀源五郎、鈴木光司などが挙げられる。)
小さな頃に見たアメリカのヒーロー『バットマン』に影響を受け、アメリカのローカルテレビで見ていた日本のアニメーションに夢中になっていたお話。「アストロボーイ(鉄腕アトム)」「マグマ大使」から「8th MAN(エイトマン)」など、私も夢中になった昭和のアニメーションがたくさん紹介されました。
そして、ブックデザイン(装丁)した日本の作家の本をいくつか紹介。
Kenzo Kitakata 北方謙三の『Ashes(棒の悲しみ)』は3つのレイヤーになっていて、日本を歩き、昭和のポスターや看板などの写真を撮ったり集めたそうで、中野ブロードウェイの写真を使った装丁でした。Koji Suzuki 鈴木光司さんの『Dark Water(仄暗い水の底から)』『LOOP(ループ) 』も紹介。私の大好きなスヌーピー『PEANUTS』関連の本、「スヌーピーとチャールズ・M・シュルツの芸術 必要なものだけを(Only What's Necessary)」などの装丁もチップさんがしています!!「スヌーピーミュージアム」の図録買いましたよー。
ハルキ ムラカミとの出会いは26歳の時。『象の象徴』から30年仕事している。ハルキ ムラカミの存在を世界に広めたのがチップ・キッドですね。装丁した本を映して、1冊ずつのデザインのアイデアの過程をお話ししてくれました。
『象の消滅 The Elephant Vanishes』表紙のアイデアはシルバニアのフリマで見つけたビールタンクから。コラージュを組み合わせ日本ぽくないデザインにした「本のタイトルとイメージがあればいいので」
『After Dark(スプートニクの恋人)』夜の東京のパチンコ屋さんで写真を撮った。ドアが閉まった時の写真がそれ。
『The Wind-Up Bird Chronicle(ねじまき鳥クロニクル)』ねじまき鳥のイメージを『ニューヨーカー』誌の表紙のイラストレーションを手掛けている CHRIS WARE クリス・ウェアに絵を描いてもらった。スパットクロスがどうのとか言っていたけれど、多分聞き間違いですね。
『Colorless Tsukuru Tazaki and His Years of Pilgrimage(色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年)』はNew Yorkerで紹介された本。デザインは地下鉄の路線。
『1Q89』はチャレンジだった。半分読んだきりだったと🤣。2つの表面を表したくて半透明の紙を重ね、予算がかかるけれど通ったデザイン。
『The Strange Library(不思議な図書館)』はおもしろいデザイン。
チップさんのお気に入りは『Kafka on the Shore(海辺のカフカ)』で、歳をとったものの表情をPhotoshopで加工した。ナカタさんのことかなぁ。
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続いて 【ご登壇者】ピエール・フォルデス(映画監督、作曲家、画家。パリで育ち、ピアノ、作曲、管弦楽法を学ぶ。ニューヨークで映画や広告の作曲家としてデビューし、その後ヨーロッパに戻る。デッサン、絵画、アニメーションに熱中し、ブダペストの美術アカデミーに入学する。『めくらやなぎと眠る女』は初の長編監督作品。同作品のために特殊なアニメーション技法 "Live Animation "を考案した。同作品は2023年ブリュッセル国際アニメーション映画祭Animaで最優秀アニメーション賞、第1回新潟国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門でグランプリを獲得した。現在は、1988年にノーベル賞を受賞したナギーブ・マフフーズの原作を映画化した『Chimères』と、猫と魔女と逆転した世界を描いた家族向けのオリジナル長編アニメーション『Bibi and the Magic Mountain』の2本のプロジェクトを進めている。)
『めくらやなぎと眠る女』は村上春樹の6つの短編『かえるくん、東京を救う』『バースデイ・ガール』『かいつぶり』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『UFOが釧路に降りる』『めくらやなぎと、眠る女』を翻案して制作した長編アニメーションです。
ピエールさんのお父様はハンガリー人のアーティスト(CGアニメのパイオニアであるピーター・フォルデスさん)お母様は英国人の詩人だそうです。音楽〜俳優〜演出〜音楽という経歴。
📕台湾の友人に薦められて読んだ『象の象徴』が村上春樹との出会い。ハルキの神秘性に惹かれたと。ブダペストに移り映像を始め、ハルキの短編をアニメーションにしようと思った。
🎞️「ものがたりを選んでくれ」と言われたが一つを選べないので、直感で選んだ。ただ資金繰りが大変だったことで、台本に時間をかけることができた。
昔、船上で『Ulysses ユリシーズ』(ジェームズ・ジョイス)を読み、深い海に溺れたけれど息はできる、ような感覚に。
ムソルグスキーの「♫展覧会の絵」からインスピレーションを得た。
🎞️ ハルキは阪神・淡路大震災が発生した直後を書いてたが、映画は2011年東日本大震災から5日後の東京にした。
🎞️ショーのような構図にしたかった。
🎞️最初に読んだ英語版にはカジュアルさがあり、仏語版はしっくりこなかった。なので、日本語版からの翻訳をお願いすることにし、理解を深めるために来日。お弁当を持って電車に乗る日々に。
🎞️アニメーションのアプローチは映像と違い、目ではなく私の脳がどう解釈するかだ。
🎞️作品に忠実に。作者と読者の間を繋げる。
例えば「怖い部屋」→ 「怖い」には読み手の背景がある=読み手が所有。そこにサブテキストを加えることで読み手の背景に繋がる。
最後に10分間ほどのダイジェストで『めくらやなぎと眠る女』を観せていただき、すごく感動。
監督・脚本:ピエール・フォルデス 原作:村上春樹
声:ライアン・ボンマリート、ショシャーナ・ビルダー、マルセロ・アロヨ、スコット・ハンフリー、アーサー・ホールデン、ピエール・フォルデス
原題:Saules Aveugles, Femme Endormie 英語題:Blind Willow, Sleeping Woman
2022/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作
「監督が〈ライブ・アニメーション〉と名づける実写撮影をベースにした技法で、村上春樹の不思議で生々しい作品世界を映像化した「めくらやなぎと眠る女」」
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こちらの記事も良かったのでご紹介『村上春樹をめぐる「冒険」を通じて、 通いあう世界の人々の心』
第1セッションのご登壇者のお一人、村上春樹の本を多数翻訳されている作家のブライアン・ワシントンさん。彼の短編集の中から「ロックウッド」という短編を柴田元幸さんが翻訳したものがパンフレットに掲載されてていました。
成河オフィシャルXより岡田トオルのお写真。