「光への道は遠く」ソワレは高橋いさを作・田島亮演出『好男子の行方─三億円事件─』を初日ぶりに観劇。
『好男子の行方─三億円事件─』初日★★★★★
「三億円事件」に巻き込まれとても悲惨な状況に追い込まれる4人の銀行員と2人の上司といちばん悲惨な目に遭う1人の新入社員の、「三億円事件時効成立」までの銀行支店長室でのワンシチュエーション会話劇(一幕三場)。自分や会社の保身のために仲間を犠牲にするなんて… サラリーマンの性をコミカルに。いちばん正しいことを訴えていた新入社員の人生を一変させた… 我が身に起きたら到底笑えないくらい酷い話なんだけど、大事件のそこを切り取ってフィクションで書かれた高橋いさをさんの原作本とピカイチの俳優陣の演技とコメディタッチの演出ですごく面白い舞台になっているのだから最高です。みんなでお茶を飲む場面とか2人がかぶることになるヘルメットの演出とか支店長と次長コンビとか懐かしい黒板とかね。キャストの芸が粋というか間とかいちいち絶妙なのですよ。
「犯人の顔を覚えていない」のに「年齢22歳くらいで色白細面で綺麗な目をしている好男子」のモンタージュ写真を作るために嘘をついて警察の捜査を混乱させてしまったことで病んでしまった古田(田中穂先)と手を繋いであげている高山(杉木隆幸)とか、モンタージュ写真を作りに出頭すると4人が部屋を出て行ったあとでラジオから流れるその年のレコード大賞確定と言われていたピンキーとキラーズの曲に合わせて踊る支店長(若杉宏ニ)と次長(坂元貞美)とか、大好き。
東野(銀ゲンタ)が鼻歌で歌う沢田研二の曲が流れた時、田島亮くんが音楽も選曲したんだなと確信。笑 クレジットに音楽担当者のお名前がないから少なくとも演出作品はきっと亮ちゃんが選んだな、と思いました。どれだけのことがインプットされているのでしょう。適材適所すぎるキャスティングができるプロデュース力とか(皆さまのスケジュールに感謝)。田島亮恐るべしです。
『好男子の行方─三億円事件─ 作:高橋いさを 演出:田島亮
藤岡支店長(若杉宏二)、松平次長(坂元貞美)、銀行員・中村(筑波竜一)、銀行員・関根(五島三四郎)、銀行員・高山(杉木隆幸)、銀行員・古田(田中穂先)、銀行員・東野(銀ゲンタ)
あらすじ「1968年12月、東京府中で輸送中の現金三億円が白バイ警官に偽装した男に奪取される。現金を運んでいた銀行員たちは「犯人は色白の好男子だった」と証言するが、そこには他人には言えない秘密があった。金を奪われた関東信託銀行の銀行員たちは、この前代未聞の強奪事件にいかに対処したか? 三億円事件を金を奪われた銀行員たちの視点で描く。」
高橋いさをさんがこの本を書いたのは「ある日、三億円事件を紹介するとある本を読んでいたら、「事件が起こった1968年12月10日から三日後、12月13日の夜。金を奪われた日本信託銀行国分寺支店の銀行員たちは支店長室に集まり、事件の経緯を支店長に報告した」という一節があった。この一節に出会った時、わたしはそこでどんなやり取りが行われたのかを想像して本作を書いたのだった。」とあります。
私を含め会社勤めしている人が見たら自分だったらと考えさせられる舞台です。きっと彼らの中の誰かになると。
取り急ぎここまで。アフタートークの話は追記します。