ヘンテコな違和感(笑)
2003年が初演のハイバイ岩井秀人さんの作品『ヒッキー・カンクーントルネード』のその後を描いた新作。まずはタイトルから好きでした(笑)岩井さんの作品をいくつか観て(まだ少ないけれど)、岩井さんご自身を見たり読んだり、知れば知るほど岩井さんにハマり、岩井さんを好きになる私。なんか癖になるよね?岩井さんって。
http://www.parco-play.com/web/play/hikky/
なんかね・・想像していた以上にパルコ劇場の大きさに合ってた。緊張感もあり、笑いもあり、テンポもよくサクサクと進むなかで織り込まれた会話にぐいぐい引き込まれた。後半の効果音に緊張感が増長させられました。私のボキャブラリーでは、感想をどこからどうやって書けばいいのか、うまく思いつかないような作品でした。
なので、後でね。←「あとではストレスたまるよ」って岩井さん言っていました。私の場合自分なのでストレスはないですが(笑)
舞台を見てすぐ「割り箸で作ったみたい」と思ったシンプルな木枠の美術セットが楽しい(舞台美術:秋山光洋さん)。場面転換のときそれを誰かしらが回すのですが、ちょっとぎこちなかったり計算されていないように見せているけれど、鈴木家から引きこもり支援団体事務所だったり齋藤家だったり森田家だったり・・にすごく気持ちよくサッと変わるところがすごいな〜と思いました。
たとえば支援団体事務所で新入り2人が森田登美男はどれくらい家に引きこもっていのか?というフリから、次の場面がすっと自然に「(たぶん)カンクーントルネード」の森田家のキッチン(久しぶりに外に出た登美男が外から傷ついて帰ってくる)一場面になったところなんておーって思ったもの。転換がすごく多いのに・・セットの木枠は同じ(向きが違うだけ)なのに混乱はしません。別の意味での混乱(視覚ではなく自分の気持ち)はありましたが。
シリアスな題材なのにクスクス笑わせながら軽快に進むギャップがおかしいのですが、終わりに近づくにつれ笑えなくなり最後はとてもやるせなく悲しくなりました。社会にまだなじめていないように見える挙動不審の元・引きこもりの森田登美男のこと、お芝居の主役で吹越さんが演じているから一生懸命さが伝わってきて愛しい存在になっていますが、実際そばにいたらどうかな・・と考えてしまいました。少なくとも満員電車で大きなリュックの中のものを落としてしまった人を助けることが出来る人でいたい・・。
私は、登美男の妹の綾と斎藤和夫の母よしこがとても好きでした。そう!!その妹というのが100分de名著「チェーホフのかもめ」のニーナ役で川口覚くんと共演していた岸井ゆきのちゃんです。とてもよかったです!お兄ちゃんの好きなことをみとめてあげて、それがうまいことを褒める気持ちのやさしい女の子でした。だから登美男も妹といると楽しそうです。
「世界は太郎くんにとって親でもなんでもないですよねー」黒木さんの台詞。 すごく頭に残っています。
「外に出たほうが幸せになる可能性があがる。不幸せになる可能性もあがるけど。」と登美男。
死んじゃだめ。
あ、「ひょうろう攻め(兵糧攻め)」って初めて聞きました(笑)ホントにあるのね。 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/188160/m0u/
★ ★ ★
ということで、パルコ劇場では珍しいアフタートークのお話だけ少し。
出演は、岩井秀人さん・森田登美男@吹越満・鈴木和夫@古舘寛治・黒木@チャン・リーメイさん(アイドル歌手のような派手なピンクのすごいたくさんのリンゴ柄のワンピース!)。岩井さんが進行役となり終演後にお客様から集めた質問を読み上げました。以下、順番バラバラですが。
吹越さんのヒッキーの役作りの参考にしたのは「岩井さん」ヒッキー・カンクーンのときの岩井さんの状態が頭にあったとか。岩井さんの台本の台詞の句読点からも役が出来上がるというのが興味深いので台本読んでみたいと思いました。吹越さんはあのポスターのチェックのシャツと変なジーンズを撮影で着たそのときから、歩き方やしゃべり方が “ああいう”キャラクターだったそうです。
なんだろう・・森田登美男になっている吹越さんに一切隙がなかった!100%登美男。
吹越さんのソロライブのスケジュールの質問が複数。年内にソロライブのスタッフとの作品が1本ある(演出と出演)。ソロライブは再来年?
「3年ぶりに家から出て今日仕事が決まったという今日まで引きこもりだった方」から「怖いのでアドバイスを」という質問があったときに話が出たのは、吹越さんは本読みのときから緊張していたということ。仕事をしているひとでも怖いからと、アドバイスにはならず。
「仕事がないので家にひきももっている」という方へは「仕事をしてください」って言ったかな。厚生労働省が決めたことだったかな?半年親以外とコミュニケーションがないと引きこもりだという決まりができたそうです。へぇ〜ですよね。(「ひきこもりガイドライン」ですね)
岩井さんは「笑うと考えることをやめてしまうので、今回は笑いを重視しないような作品を作った。」そうです。はい、そうでした。笑うより考える
「“出張おねえさん”の黒木はヒキコモリだったのか?」の質問にはチャン・リーメイさんは引きこもりだったと、岩井さんは引きこもりじゃないと思って書いたようです。主人公の“出張おにいさん”の森田は元引きこもりです。
チャン・リーメイさんの黒木にはモデルがいるそうです。高校の同級生の女の子。古舘寛治さんの鈴木和夫は・・役作りなし(笑)みなさんに心配されるよーって言われていました。
あといくつか質問があったのですが・・
最後に「岩井さんが引きこもりになったきっかけ」を岩井さんが、ご自分の体験からだと3時間くらいかかるお話を3分くらいでお話してくれました。小学校のとき自分以外を生きていると思っていなくて人を殴ったりしていて、はじめて人に殴りかえされ痛みがわかり人と接するのが怖くなって、尾崎豊を聞くようになり、引きこもった。
家から出たきっかけは臨床心理士のお母様がWOWOWに入ったことがきっかけ。サッカーを見て4年ぶりに友だちをサッカーに誘ったとか。リングスというプロレス番組もきっかけのひとつで、最終的には映画が撮りたくなったというようなお話でした。
最後に「今の話を今日やればよかったのに」と古舘さんが岩井さんにツッコミを入れてアフタートークはお開きとなりました。