ほらほらコーヒーが冷めちゃってるよ 2

好きな人に伝えたいことはできる限り直接伝えます。都々逸作っています。浦和レッズと演劇と映画と音楽が大好き! 田島亮(・中嶋将人)、成河、亀田佳明、イキウメと浜田信也。演出家・藤田俊太郎を応援しています。小林賢太郎・片桐仁、ラーメンズは永遠に好き。B'z、BrandonBoyd&Incubus、JasonMraz、大橋トリオ、Eddie Redmayne

演出家・藤田俊太郎

f:id:Magnoliarida:20230705103256j:image演出家 藤田俊太郎、大竹しのぶ一人芝居『ヴィクトリア』の脚本・ベルイマンを語る「私の人生に決定的な影響を与えた表現者」 | SPICE - (取材・文・撮影=吉永美和子さん)

イングマール・ベルイマンの『鏡の中の女』について
「(英題の)『Face to Face』というタイトル通り、自分自身と向き合う話。女性の人生、葛藤やコンプレックス、父もしくは母の不在みたいなことが語られていますが、それは『ヴィクトリア』にもモチーフとして出てきます。女性の驚くべき内面が、画面にあふれ出ていると感じます。映画と演劇の価値観の、見事なコラボレーションではないかと考えます。おそらくベルイマンが演劇人でもあったからこそ、人物の内面を見事に表出することができたのではないかと、私は思っています。
ベルイマンは著書や自伝で『神を描くこと』に触れています。私個人は、神そのものだけではなく、20世紀の神なるもの……対峙すべき巨大なものが崩壊した時代に、どうやってその喪失感と向き合っていくのか? というのが、ベルイマンの主題の一つだったんじゃないかと今、あらためて考えています。その崩壊や喪失との対峙が、個人の美しさとして作品の中に集約されているのだと、改めて感じました」
『ヴィクトリア』と大竹しのぶさん
「精神を病んだ女性・ヴィクトリアが、少女時代から現在までの記憶を振り返る。一人芝居とは思えないほどシーンチェンジも登場人物も多いが、藤田はセットも衣装も変えず、大竹の演技だけですべてを見せるという、思い切った演出プランで挑戦。そして大竹は見事に期待に応え、藤田が「何にも代えがたい演劇体験を残してくれる大竹さんの、新境地の一つではないか? というふうに思う」と語るほどの作品になった。」
稽古が始まった頃、大竹さんは『この女性は、なんでこんなに過去にこだわり、病み続けているんだろう?』というふうなことをおっしゃっていました。でも『ベルイマンは何を描きたかったのか』という真髄に迫った時に、そこには徒労感や絶望感とは違う、未来に向けたメッセージ……『生き続ける』ということがあるんじゃないかと。それを見出して、大竹さんは(ヴィクトリアに)共感されたんじゃないかと思います」

故・蜷川幸雄のもと10年…演出家・藤田俊太郎の「ルーツ」とは (取材・文/吉永美和子さん 写真/バンリさん)

──蜷川さんから学んだ、一番大きなことってなんでしたか?
すべてですね。生きること、生き続けることのすべて・・・と言いつつも、いまだに学んだことで言語化できないことが多いです、崇高すぎて。ひとつ確かなのは、自分にあれだけ厳しい方に僕は会ったことがないし、自分に厳しくないと、あれだけの場所にはたどり着けない。蜷川さんのことは毎日のように思い出すけど、おっしゃっていたことの意味が、まだ自分はひとつもわかっていないという気もしますし、それを知りたいからがんばっています。
──それもひとつの、演出を続ける理由に。
なっていますね。近づきたいと思います。遠すぎるんですけど(笑)。蜷川さんの言葉は、痛烈なものからやさしいものまで、ちゃんとノートに取ってあるんですが、今それを読み返すと、戯曲の読み方、言葉との向き合い方、世界との対峙の仕方を、蜷川さんは全力で伝えようとしてくれていたんだな、と思います。今回の『ヴィクトリア』でも「ああ、あの言葉はそういうことか」と気づかされることが多かったです。

大竹しのぶさん
──蜷川さんの現場でしばしばご一緒していた大竹さんと、ついに! という感じですよね。
とある海外の作品をやったときに、上演時間をコンパクトにするため、あらかじめ台詞をカットした台本で稽古をしていたんですけど、大竹さんがとあるシーンの稽古をしていて「台詞がつながらない気がするけど、(カットした部分は)どうなってるのかな?」って、翻訳家さんに聞いたんです。1ページぐらいある台詞を、その場ではじめて見せたら、数分で覚えて、その直後の稽古で一言も間違えずに言ったんですよ。その場にいたみんな感動して泣いてましたね。